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人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは神奈川県厚木市の中心「本厚木」。
凋落ぶりが話題だったが…いつの間にか「住みたい街」に
コロナ禍前と後では、「住まい」に対する考えが大きく変わりました。リモートワークが当たり前となり出社が前提でなくなると、通勤時間重視から住環境重視へと変わっていったわけです。
そのなかで注目を集めたのが、神奈川県の県央に位置し、東京都心からは30~45kmに位置する「神奈川県厚木市」。なかでもその中心である小田急小田原線「本厚木」駅周辺は、生活利便性が高いうえ、「新宿」へは50分弱。途中「代々木上原」では東京メトロ千代田線に乗り入れ、「表参道」「赤坂」「大手町」と東京を代表するオフィス街にもダイレクトにリーチできます。さらに隣駅「海老名」では相鉄線利用で「横浜」方面にもアクセスできます。
このような点も評価されたのでしょう、不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME’Sによる「借りて住みたい街」では2020年のコロナ禍調査より5回連続で1位。「買って住みたい街」でも2024年には6位にランクインしています。
元々、厚木市は日本の大動脈である東名高速道路がはしり、厚木IC付近は物流の拠点であり、工場等も多く立地。現役世代から支持されるエリアです。また東京農業大学厚木キャンパスを始め、教育機関も多数立地し、単身の若者層も比較的多いエリアという特性も。
そんな厚木市の中心駅である「本厚木」周辺は、商業の集積がみられるほか、北口には繁華街が広がります。以前は、丸井やパルコ、イトーヨーカドーなどの大型商業施設が立地し、活気に満ちていましたが、2000年代に入ると相次いで閉店。また「ららぽーと海老名」などの商業施設が新しくオープンした「海老名」と比較され、その凋落ぶりがある意味、話題となっていました。
このまま廃れる一方なのかと思われた矢先にコロナ禍。都心にもアクセスしやすく、ちょうどいい郊外の筆頭として注目を集め、いつの間にか「住みたい街ランキング」で堂々トップに輝くほどの人気ぶりに。
また近年、駅前では再開発計画が進行。商業施設やタワーマンションの建設が進むなど、街の景観も徐々に変わりつつあります。
注目エリア「本厚木」の2040年の姿
大型商業施設の相次ぐ閉店により、つい最近までその凋落ぶりが話題となっていた「本厚木」。いまや「住みたい街」に変貌を遂げた注目エリアの今後についてみていきましょう。
2020年に行われた国勢調査によると、神奈川県厚木市の人口は22万3,075人。5年前調査から2,009人の減少を記録しています。一方で世帯数は10万0,360世帯。こちらは4,536世帯の増加。ファミリー層は減少傾向にありますが、その分、単身者層が増えていることがわかります。
厚木市の平均年齢は46.29歳。さらに年齢区分別にその割合をみていくと、15歳未満は11.69%、労働生産人口である15~64歳は61.16%、65歳以上が25.71%。一方で神奈川県の平均はそれぞれ11.75%、60.94%、24.99%です。年齢構成からも、働き盛りの単身者が増えている一方で、ファミリー層は減少傾向にあること、さらに神奈川県の県央に位置し、都心から30~45kmと離れていることから、今後一層、高齢化が進むと予想されます。
人口分布を人口ピラミッドでみていきましょう(図表1)。0歳から順にみていくと、段々とボリュームが増えていき、20代前半以降は、結婚・出産を経験する30代前半にかけて落ち込んだあと、40代後半で一度ピークに達します。
さらに「本厚木」駅徒歩圏内の12の“町”についてみていきます。「本厚木」駅周辺エリアの人口は3万2,338人。世帯数は1万5,707世帯で、そのうち単身世帯が8,386世帯と半数以上を占めています。また持ち家率は48.44%で、公営・都市再生機構・公社の借家を除く民営の借家の割合は42.28%。持ち家率が5割を割りこみ、比較的賃貸需要の高いエリアといえるでしょう。
さらに各町の賃貸率をみていくと、エリア平均を上回るのは、駅南側エリアの幸町、泉町、旭町、駅北側エリアの、徒歩10分強の松枝、元町、水引。駅北側に繁華街が広がる「本厚木」周辺では、駅南側のほうが駅チカで賃貸物件を見つけやすいといえそうです。
次に家賃相場についてみていきましょう。「本厚木」駅周辺の家賃相場を大手住宅検索サイト3社の平均でみていくと、単身者がターゲットとなるワンルームで6.4万円、1Kで6.5万円、1LDKで8.9万円。ファミリー層もターゲットとなる2LDKで11.7万円、3LDKで14.6万円です。
小田急小田原線のひとつ新宿寄りの「海老名」と比べると、ワンルームや1Kでは同水準ですが、これより広い間取りになると割安になるようです。
「海老名」は大規模なショッピングエリアが誕生し、小田急電鉄が本社を移したことでも注目されていますが、利便性を確保しつつ、家賃を抑えたいという人たちに「本厚木」は支持されているのではないでしょうか。
そんな神奈川県厚木市の将来像をみていきます。
国立社会保障・人口問題研究所の推計のなかで、最も厳しいパターンでは2040年以降に人口20万人を下回り、2060年位は人口16万人台になります。最も楽観的なシミュレーションでも人口減は止められず、2060年代には20万人をキープできるかどうかという水準です。(図表2)。
2015年時点での人口を100とした際の年齢別の人口推計をみていくと、唯一、人口増が見込めるのは65歳以上の高齢者のみ(図表3)。賃貸経営においてメインターゲットとなる現役世代は、2040年には2015年水準の8割、2050年には7割まで低下します。賃貸経営においては、増え続ける高齢者需要にどう応えていくかというのも、重要な戦略といえそうです。
さらに「本厚木」周辺の将来人口をメッシュ分析でみていきます。
メッシュ分析では2015年の人口と2040年の将来推計人口を比較した際、増加率が0を上回ると暖色系の色に、0を下回ると寒色系の色が濃くなって表示されます。それによると「本厚木」周辺は寒色系の色が広がる一方で、駅西側エリアには人口の微増のエリアが広がります。
「本厚木」周辺における不動産投資では、今後、人口減=ニーズ減が見込まれるエリアです。しかし神奈川県県央の中心というポジションは、「本厚木」周辺が担っていくと考えられ、これからも一定のニーズが見込まれるエリアといえるでしょう。このようなエリアではいかにニーズに応える物件であり続けるか、物件力と管理力が勝敗を分けます。