目次
将来を見据えて資産形成が必須といわれているなか、多くの人がさまざまな手法で運用を始めています。一方で、投資とは表裏一体のリスクが怖くて、第一歩を踏み出せない人もいます。しかし、そういう人こそ注目したいのが、「投資をしない」というリスク。今の時代、投資をせずにいると、どのようなリスクに直面するのか、考えてみましょう。
資産運用の始め時の30代だが…投資で直面するリスクとは?
30代はどれくらい貯蓄をしているのでしょうか。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)によると、二人以上世帯の平均額は601万円、単身世帯の平均額は594万円です。20代の平金額は二人以上世帯で249万円、単身世帯で121万円ですから、収入が増えたり将来のライフプランのために貯金や投資を始めたりする人が多くなるのかもしれません。
では、リスク性金融商品を保有している人はどのくらいいるのでしょうか。日本証券業協会の『令和3年度証券投資に関する全国調査』を見てみましょう。調査の対象となった30代男性531人のうち、預貯金をしている人は475人、株式を保有している人は74人、投資信託を保有している人は67人。30代女性518人のうち預貯金をしている人は485人、株式を保有している人は32人、投資信託を保有している人は35人です。
複数回答ですので、預貯金や株式、投資信託のうち複数を保有している人も含まれる可能性があります。一方で上記の調査から、「預貯金はしていても、投資には一歩踏み出せない」という傾向があるということも考えられます。
「証券投資は必要とは思わない」と回答した人は、30代男性の57.4%となり305人、30代女性は64.7%の335人。「証券投資は必要ない」理由として「損する可能性がある」が最も多く、30代男性140人、30代女性151人です。次いで「金融や投資に関する知識を持っていない」「ギャンブルのようなもの」「価格の変動に神経を使うのが嫌」と続きます。
投資をする・しないでこんなに違う!
「証券投資は必要とは思わない」という人の多くは、「投資した資金の価格が一定ではなく損をする可能性がある」ということを理由として回答しています。投資には預貯金より大きなリスクが含まれることになります。では、リスクとはどういうものでしょうか。投資のリスクは、資産運用による収益と損失が不確実でぶれがあるということをいいます。
金融商品のリスクには次の6つがあります。
■株価変動リスク
株式の価格が上がったり下がったりする可能性のこと。
■信用リスク
株式や債券などを発行している企業や国が、経営不振や財政難などになり、利息や元本などを支払うことができなくなる可能性のこと。
■流動性リスク
現金として使いたいときに換金できない可能性のこと。
■金利変動リスク
金利の変動が債券価格に影響する可能性があること。金利が上がれば債券価格は下落し、金利が下がれば債券価格は上昇します。
■為替変動リスク
円高ドル安など、為替が変動することで資産価値が変動する可能性があること。
■カントリーリスク
投資している国や地域の政情不安などが起こることで、資産価値が変動する可能性があること。
これらのリスクによって損失を被る可能性は、長期運用、分散投資、積立投資によって小さく抑え、収益を得る可能性を大きくすることができます。
たとえば、毎月3万円ずつ投資を行うと、想定利回り3%なら21年目には元本756万円、運用収益295万円となり、合計1,051万円貯めることができるというシミュレーション結果になります。同様に毎月3万円ずつ、想定利回りを銀行の普通預金と同じ0.1%で積み立てていくと、21年目の運用収益は8万円、元本との合計764万円です。
「投資をしない」もひとつのリスクである
投資はどんなときでもうまくいく、というわけではありません。投資をする際には、投資した資金(元本)は保証されません。元本割れを避けたい場合は、元本が保証された金融商品を選ぶとよいと思います。ただし利回りが小さくなるので、お金を増やそうとしたときには、より長い期間が必要になります。
また、金融や投資に関する知識を学ぶことは必要です。比較的投資のリスクが小さいといわれている金融商品であっても、投資を始めたあとにそのまま何もしないで、積み立てのみ行うということではなく、経済の情報を得ながら定期的に運用状況をチェックしなければなりません。
始めることは簡単ではないように思うかもしれませんが、投資をしないことはひとつのリスクとなる可能性があります。たとえば、20年で1,000万円を貯めようとしたときは、先ほどのシミュレーションのように、想定利回りが3%なら毎月3万円で準備できます。ところが、利回りを0%とした場合は、20年で貯めるために、毎月4,7万円積み立てなければなりません。このように、投資を行うと、毎月の積立額が少額であっても、目標額を準備できる可能性が高くなります。
また、インフレにより物価が上昇する場合には、資産価値の目減りが起こります。投資をせず保有している現金などは、価値が相対的に下がるので、現在100万円で購入できるものが、将来は100万円では購入できないというように、資産価値の目減りに対応することができません。
プロにすべてをお任せする「不動産投資」と、気を付けるべきリスク
不動産投資は、購入した土地や建物を貸し出し、入居者などから家賃収入を得たり、売却益を得たりする仕組みの投資のことです。入居者が定着すれば安定した家賃収入が得られます。物件選びをしっかりと行えばリスクを抑えられ、不動産の管理運営を管理会社に委託することができるので、自分の時間はあまりかけなくてもよいというメリットがあります。
不動産投資を行うために物件を購入するときは、多くの場合は購入するための資金を金融機関から借りて不動産ローンを組みます。30代は20代のときより年収や貯蓄に余裕のある人が増える場合が多く、融資を受けやすくなります。30代の人は就労期間が長いので、長期間の返済ができるため、ローン返済額を抑えることが可能です。
不動産投資・賃貸経営の主なリスクは、空室リスク、家賃滞納リスク、修繕リスク、家賃下落リスク、不動産価格下落リスク、災害リスク、金利上昇リスク、事故リスク、損害賠償リスク、などがあります。
不動産投資は不動産業者と連携して進めるため、信頼できる不動産業者を見極めることが重要になります。同様に大切なことは、不動産投資を始める目的を持ち、現実的な計画を立てることです。不動産業者に任せておけば大丈夫と考え、あいまいな知識しかない場合は、失敗の可能性が高くなります。ご自身でも継続的に情報の収集を行いましょう。
<執筆者>
藤原 洋子
FP dream 代表FP
大学卒業後、食品メーカーに就職。結婚を機に退職後、専業主婦期間を経て国内大手生命保険会社に転職。営業担当として約12年間、保険商品の販売等を行う。FP資格を活かし、2016年から独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー相談、執筆、勉強会の運営などを行っている。保険の活用と老後を見据えた資金計画、相続について、わかりやすくお伝えしている。