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初めての資産運用を考える上で、まず候補に挙がってくるのは「ワンルームマンション投資」ではないでしょうか。しかし、ネットで「ワンルームマンション投資」と検索してみると、入力枠には「やめておけ」「失敗」などの第2ワードが出てきます。なぜワンルームマンション投資は「やめておいたほうがよい」といわれるのでしょう? その理由と、不動産投資に失敗しないためのリスクヘッジ策について解説します。

そもそも「ワンルームマンション投資」とは?

「ワンルームマンション投資」とは、専有面積20平米台の単身者向け住宅を賃貸運用することで収益を得る不動産投資の一種です。ターゲット層は学生からビジネスパーソンまでと幅広く、東京をはじめとする大都市圏においては高い需要を見込むことができます。その理由は言わずもがな、大都市圏には大手企業の本店・支社や大学・専門学校などが集結しているため、全国各地から若者たちがどんどん流入して住まいを求めるからです。学生は卒業、ビジネスパーソンは転勤のタイミングで転居してしまうケースも少なくありませんが、大都市圏であれば新たな入居者もすぐに決まります。

「空室知らず」と「高家賃」を謳い文句に、大都市圏におけるワンルームマンション投資は「初心者でも簡単に、安心して取り組める」と、数多の不動産業者が物件購入を勧めてきます。しかし、実際はこれが簡単ではないのです。

なぜ「ワンルームマンション投資」はやめておいたほうがよいのか

「ワンルームマンション投資に失敗して大赤字をくらった…」という投資家の嘆きはよく聞きます。とはいえ初めから失敗しているわけではなく、ほとんどの投資家がスタートからしばらくは順調に収益を上げています。しかし以下の「2つの問題」が起こると、それまで良好だった賃貸経営は暗礁に乗り上げてしまうのです。

建物の手入れが必要になる

賃貸住宅の人気は築10年を過ぎると急激に下落します。建物外部の老朽化のみならず、室内のインテリアや設備に「古さ」が感じられるようになるからです。エアコンや給湯器など住宅機器は10年前後が交換時期といわれます。またインテリアのトレンドも10年経てば様変わりしています。これは不動産全般に言えることですが、新築から概ね10年目は建物の「手入れ時」で、修繕すべき箇所が一気に出てくるのです。

不動産投資上級者はそのタイミングを見越して修繕資金を蓄えています。投資物件を複数所有していれば、それらの収益から資金補填することも可能でしょう。しかし、修繕資金を蓄えていない、資金補填できる他の資産もない初心者はここで「失敗の気配」を感じることになるのです。

空室が埋まらず収益ゼロになる

新築時には競合する賃貸物件がなかったエリアでも、数年経てばライバル物件はどんどん増えていきます。ライバルのほうが築浅であれば、入居者は迷わずそちらを選ぶでしょう。そうなると古い物件は「低家賃」で攻めるしかありませんが、設備やインテリアの修繕が行き届いていなければ、どんなに家賃を下げても空室は埋まりません。

新築当時からの家賃水準を維持することは困難なことです。危機感のない投資家はいずれ「失敗」することになります。空室が出れば収益はゼロになり、同時にローンの返済も苦しくなるでしょう。もし毎月の返済額が家賃収入とほぼ同額であったら、長期にわたる空室は命取りです。投資家は自らの貯蓄を切り崩すしかなくなり、最終的にはデフォルト(債務不履行)に陥ってしまいます。

ワンルームマンション投資の選択肢もある

たった一戸のワンルームマンションにすがる不動産投資には、慢性的に「失敗」のリスクが付いて回ります。そのため、他の種類の不動産への投資も検討すべき必要があるのです。不動産投資には、ワンルームマンションをはじめとする区分建物のほかに、一戸建て、一棟建物、駐車場、REITなどさまざまな投資対象があります。このなかでも、あらゆる経営局面においてリスクヘッジが可能といわれるのが「一棟建物投資」です。一棟建物には鉄筋コンクリート造のマンションやオフィスもありますが、初心者でも取り組みやすいのは、木造や軽量鉄骨造の「一棟アパート」でしょう。

一棟アパートは小規模なものでも4戸前後の部屋数があります。たとえそのなかの1戸が空室になっても、残り3戸の家賃は入り続けます。すなわち、1戸の区分マンション投資より複数戸を有する一棟アパート投資のほうが空室リスクを分散できるということです。

加えて、一棟アパートは建物の外壁修繕や建て替えを所有者(=投資家)自身の判断で自由に行えますが、区分マンションは建物を共有する複数の所有者(=管理組合)の承諾を得ないと勝手に工事はできません。

一棟アパートと区分マンションとの最も大きな違いは「土地の所有形態」です。一棟アパートの場合、土地と建物の所有権を一人の名義にできますが、区分マンションの場合、土地は「所有者全員の共有」となり、所有権は各所有住戸の専有面積で案分されます。原則として区分マンション(敷地権)の土地は建物(住戸)と別に売買することはできません。しかし一棟アパートは土地のみ、または建物のみで売買することが可能ですし、将来建物が朽ち果てても、その土地を資産として子や孫に残すことができます。