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自分は順調に資産を築いているつもりでも、親が地方に持っている「広すぎる自宅」や「老朽化したアパート」が将来の重荷(維持費・相続税)になることに気づいていない――FPが、親の代の「守れない資産」を放置するリスクを警告。親の資産を整理しつつ、自分の与信を使って「次世代に繋がる資産」を構築する戦略を提案します。
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「実家の不動産」は時限爆弾
年収3,000万円。世間から見れば間違いなく「成功者」の部類に入る45歳の外資系企業役員、Aさん。都心のタワーマンションに暮らし、子供の教育にも投資を惜しみません。自分は一生安泰といえる、盤石な資産を築いている自負がありました。
しかし、その自信が揺らぎ始めたのは、正月に帰省した際、父親からかけられた言葉がきっかけでした。このままでは、自分の資産が将来的に目減りしていく――そう気づかされたのです。
Aさんの実家は、某地方都市の駅からバスで20分ほどの閑静な住宅街にあります。敷地は200坪以上、築55年の立派な母屋(延床面積72坪)が建っています。それに加え、父親は実家近くに35年前に建てた木造アパートを2棟所有していました。
「将来はこの家とアパートを頼むぞ。先祖代々の土地だからな」
父親はそう言いました。以前も似たような話はありましたが、当時は気にも留めていませんでした。しかし今回は、父親が「遺言書を作成している」という話題の後だったため、急に現実味を帯びて聞こえたのです。
「頼むと言われても、この古い家と土地、あのボロアパート2棟を自分が引き継げというのか……」
現実を直視したときに見えた「負の側面」
不安を抱えたAさんは、馴染みのFP(ファイナンシャルプランナー)に相談することにしました。現状を整理したFPは、開口一番こう言いました。
「Aさん、このままアパートを相続したら、Aさん自身の財産が削られてしまいますよ」
その理由は、数字を見れば明らかでした。
実家とアパートの固定資産税、および修繕費だけで、年間150万円以上の持ち出し(赤字)が発生しています。特にアパートは全12室のうち8室が空室で、家賃収入では維持費を賄えません。築年数以上に老朽化が進み、冬は結露がひどく、居住性にも問題があります。残っている4室の住民も、いずれ退去する可能性が高い状態でした。
さらに、出口戦略は完全に破綻しています。エリアの地価は下落傾向にあり、アパートは売りに出しても買い手がつきません。更地にするにしても、解体費用だけで700万円以上は必要になる計算です。
Aさんは愕然としました。客観的な数字で見ると、事態は想像以上に深刻だったのです。
FPは説きます。「相続の本質は『B/S(貸借対照表)』の継承です。相続と聞くと預貯金や土地といった『プラスの財産』をイメージしがちですが、実際には修繕義務や納税義務という『マイナスの管理義務』もセットで引き継ぐことになるのです」
親が健在なうちに実行する「首都圏への資産移転」
相続が発生してからでは、打てる手は限られます。そこでFPが提案したのは、親が元気で、かつ一定の資産と信用力を持っているうちに、「地方の負動産」を「首都圏の収益不動産」へ完全に組み換えてしまう戦略でした。
まずは、古いアパート2棟を、たとえ二束三文であっても早期に売却します。重要なのは「高く売る」ことではなく、管理コストと将来の納税リスクという「負債」をポートフォリオから切り離すことです。
その上で、親名義で首都圏の駅近など、需要が確実に見込めるエリアの新築アパートを取得します。父親にまだ資産や信用力があるうちに、それをレバレッジ(融資)として活用するのです。地方の物件には融資がつかなくても、都心の優良物件であれば、低金利で多額の融資を引き出せる可能性があります。
相続した瞬間、資産は「潤沢」に伸びる
この組み換えの真の恩恵を受けるのは、数年後に相続人となるAさん自身です。親の代で「首都圏物件」に替えておくことで、以下のような劇的なメリットが生まれます。
① 「相続税評価額」の圧縮
1億円を「現金」で持っていれば、相続税評価額はそのまま1億円です。しかし、それを都心の収益物件として所有すれば、貸家建付地としての評価減などにより、評価額を3割〜5割程度まで一気に圧縮できるケースが多々あります。相続時の無駄なキャッシュアウト(納税)を抑えられるメリットは計り知れません。
② 給与所得に加わる「第2の給与」
相続が発生したその日から、Aさんが引き継ぐのは「赤字を垂れ流す地方のボロ物件」ではなく、「毎月安定したキャッシュを生む優良資産」になります。都心の物件は空室リスクが低く、Aさんの年収3,000万円に加えて、年間数百万円の不動産所得が積み上がります。これにより、資産形成のスピードは加速します。
③ いつでも「現金化」できる流動性
地方の土地は「売りたくても売れない」のが最大のリスクですが、首都圏の駅近物件は極めて流動性が高いのが特徴です。将来、まとまった現金を必要としたときでも、確実に出口(売却)を見通すことができます。
「実家」という概念をアップデートする
「先祖代々の土地を守る」という価値観に対し、一度冷静に向き合うべきです。そもそも土地を守ることに意味があったのは、かつて土地が農業などの事業によって収益を生んでいた時代の名残です。土地さえあれば子孫が食いっぱぐれないと信じられたからこそ、その教えが守られてきました。
これを現代に置き換えるなら、「形を変えても、収益を生む仕組み(スキーム)を守る」ことこそが、真の意味での「家を守る」ことではないでしょうか。
たとえ思い入れのある実家であっても、可能であれば売却し、少なくとも自分たちの代の財産を削る原因にしないこと。それが、賢明な資産家の選ぶべき道なのです。
〈執筆者〉
長岡 理知
長岡FP事務所
代表
2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。 住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。