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「最近、知らない車がよく停まっている」「見知らぬ人が頻繁にチャイムを鳴らす」。オートロックのないアパートでは、不特定多数の出入りが他の入居者の生活を脅かすトラブルに直結します。住居として貸したはずが、ネイルサロンやマッサージ店、怪しい事務所として無断利用されていた…。近隣トラブル必至の「隠れ店舗」問題について、証拠の押さえ方から契約解除までの法的プロセスを解説します。
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テレワーク? それとも店舗? 「用法違反」の境界線
テレワーク自体は、住居としての利用範囲に収まることが多く、直ちに契約違反(用法違反)になるとは限りません。焦点となるのは、仕事の内容そのものよりも「外部に対して開かれた運用」になっているかどうかです。
たとえば、以下のような要素が揃うと、実態は“住居”ではなく“店舗”とみなされる可能性が高まります。
- 建物入口や玄関前に看板を出す
- ホームページやSNSで住所を店舗所在地として公開する
- 予約制であっても不特定多数の来訪者が出入りする
共同住宅では、他の入居者が平穏に生活する権利が守られるべきです。来訪者の増加や共用部での待機、騒音などが生じれば、用法違反として是正を求められる正当な理由となります。
オートロックなし物件で多発! 「隠れ店舗」のリアルな被害
オートロックのない物件で「隠れ店舗」が発生すると、被害は一気に表面化します。まず深刻なのが、他の入居者の心理的負担です。見知らぬ人物が頻繁に階段を上り下りし、玄関先まで来る状況が続くと、「どのような人物か判別できず怖い」という不安を招き、優良な入居者の退去につながるリスクがあります。
次に起きやすいのが共用部トラブルです。通路への什器設置や、来客による無断駐輪などにより、建物全体の秩序が崩れやすくなります。さらに、想定以上の人流は建物(床や手すり等)の摩耗を早め、修繕費の増加や安全管理上の問題にも波及します。結果として、オーナーは空室リスクとコスト増を同時に抱えることになりかねません。
「出て行ってほしい」と言える? 契約解除へのステップ
無断店舗の疑いがあるからといって、いきなり契約解除ができるわけではありません。賃貸借契約において解除が認められるには、「信頼関係が破壊された」といえる程度の重大性が必要であり、オーナー側は慎重にプロセスを積み上げる必要があります。
- 是正勧告: まずは店舗営業の停止を求める書面を送付します。「看板の撤去」「住所掲載の削除」「来客対応の停止」など、期限を明確に提示することが重要です。
- 証拠の保全: 勧告に従わなかった事実を記録します。WebサイトやSNSの掲載画面は、スクリーンショットや保存記録(ウェブアーカイブ)として日時が分かる形で残します。
- 実態の記録: 管理会社と連携し、「出入り人数・時間帯・車両の有無」「共用部の私物化」などを写真やメモで具体化します。
これらの積み重ねが、最終的な明渡請求を支える強固な土台となります。
トラブルを未然に防ぐ「管理会社の審査力」
「隠れ店舗」を防ぐ最大の鍵は、設備の充実以上に管理会社の“審査力”にあります。入口の段階で「誰が、どう住むか」を見極められるかで、トラブル発生率は大きく変わります。
特に開発から管理まで一貫した体制であれば、入居審査時に職業や収入だけでなく、利用目的の違和感を察知しやすく、不審な申し込みを初期段階で防げる可能性が高まります。また、一定以上の賃料設定となる新築物件は、属性の良好な入居者が集まりやすい傾向にあります。規約遵守の意識が高い層を確保できる点は、新築投資の「見えにくい強み」といえるでしょう。
実態が見えない? 「隠れ店舗」を立証する解決の鍵
「隠れ店舗」問題の厄介な点は、外観から実態が見えづらく、決定的な証拠を残しにくいことです。だからこそ注視すべきは、「住居利用から、どれだけ逸脱した変化があるか」という点です。
人の出入りの頻度、車両の状況、共用部の変化など、客観的な記録(日時付き写真、管理ログ等)を積み上げることが、解決への唯一の道です。一方で、ネット販売や法人登記があっても、来客が少なく生活環境への影響が軽微な場合は、「信頼関係の破壊」とは認められない裁判例もあります。
最終的には、利用態様の変化をいかに正確に把握し、証拠化できるかが焦点となります。資産価値を守るためにも、現場の異変を迅速に察知できる賃貸管理会社との緊密な連携が不可欠です。
<執筆者>
山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。