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都心のタワーマンションを購入し、価格高騰で「含み益」が出てホクホク顔のパワーカップル。しかし、FPの視点で見ると、その家計は極めて危険な状態にありました。「自宅の含み益は、売って生活水準を下げるまで現金化できない」という事実に気づかず、膨れ上がる管理費と生活レベルの向上でキャッシュフローは火の車に。見かけの資産額に騙され、真の資産形成(キャッシュを生む資産)をおろそかにした代償と、バランスシートを改善する「賃貸経営」の視点を解説します。

 

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「自宅の価値が上がった!」と喜ぶ30代・40代の盲点

SNSやニュースで「購入時より価格が3割上昇した」という景気の良い話が飛び交う昨今、30・40代の現役世代が、自分たちも資産家の仲間入りを果たしたかのような高揚感を覚えるのは無理もありません。これまでの努力が形になったようで、誇らしく感じる瞬間かもしれません。しかし、ここには行動経済学における「ウェルス効果(資産効果)」の罠が潜んでいます。

 

資産価値上昇=「金持ちになった気分」の錯覚

含み益が増えると、人は総資産が増えたと認識し、財布の紐が緩みがちです。しかし、どれほど評価額が上がっても、それはあくまで帳簿上の数値に過ぎません。含み益は、利益を確定させない限り、日々の生活を豊かにする「現金」ではないのです。

 

「住んでいる限り利益は確定できない」という単純な事実

自宅が「住む場所」である以上、売却すれば次の住居が必要です。同じエリアで住み替えようとすれば、周囲の物件も同様に値上がりしているため、結局はより高額なローンを組むか、生活水準を下げるかの二択を迫られます。つまり、「住み続ける限り、その利益は永遠に手に届かない」というジレンマが存在します。

 

維持費の増大で、実は「負債」へと変貌しているリスク

さらに、マンション価格の高騰は、3年に1度の評価替えを通じて固定資産税の増額を招きます。新築時の税制優遇の適用期間が終了するタイミングと重なれば、修繕積立金や管理費を含めた維持費は、当初のシミュレーションを大きく上回る重荷となるでしょう。価格上昇に浮かれる裏で、毎月のランニングコストという「確実な支出」が増え続けている現実に目を向けるべきです。

 

「含み益」では老後のパンは買えない

資産とは、本来「持ち主のポケットにお金を入れてくれるもの」であるべきです。しかし、多くのパワーカップルが抱える「高額な自宅」は、その定義から外れています。

 

自宅はキャッシュフローを生まない「支出の源泉」

投資家ロバート・キヨサキ氏が説いたように、自宅は「負債」の側面を持ちます。どれほど豪華なタワマンであっても、それは毎月ローンや維持費としてあなたのポケットからお金を奪っていく場所です。将来、年金だけでは心許ない時期が来たとき、壁に刻まれた「含み益」を切り崩して食費に充てることはできません。

 

流動性リスクとダウングレードの心理的ハードル

いざ現金が必要になっても、不動産には即座に換金できない流動性リスクがあります。さらに、都心のタワマン生活に慣れた家族にとって、生活圏を変え、住居の質を落とすことへの心理的抵抗は想像以上に高いものです。結果として、売るに売れないまま「資産はあるがキャッシュがない」という“資産持ちの貧困”に陥るリスクがあるのです。

 

本当の資産家は「住む場所」と「稼ぐ場所」を分けている

真に豊かな層は、自宅と投資用不動産を明確に切り分けて考えています。

 

自宅(消費)と投資不動産(生産)の決定的な違い

自宅はあくまで「消費財」です。どれだけ高価でも、それは快適な生活を送るためのコストと割り切る必要があります。対して、投資用不動産は「生産財」です。自分ではなく「他人の財布(家賃)」によってローンが返済され、手元にキャッシュが残る仕組みこそが、富の源泉となります。

 

他人の資本で資産を積み上げる重要性

住宅ローンは、自らの労働所得で返済する「自己責任の負債」です。一方で、投資用不動産は、金融機関の資本をレバレッジ(てこ)として活用し、店借人の家賃で資産を積み上げる「事業の仕組み」です。この「他人の資本を活用する」という視点こそが、単なる居住者と真の資産家を分ける境界線です。

 

高属性だからこそできる「新築アパート投資」への転換

多くの人は、高い社会的属性を「高額な住宅ローン」を組むためだけに使い切ってしまいます。しかし、賢明な層はその信用力を「事業性融資」のために温存し、資産を増殖させる道を選びます。

 

住宅ローンがあっても「事業性融資」は引ける

「すでに巨額の住宅ローンを組んでいるから、これ以上の借入は無理だ」と思い込むのは誤解です。不動産投資に用いるのは、住宅ローンとは別枠の「事業性融資」です。物件自体の収益性が認められれば、高属性のパワーカップルなら「個人の信用」と「物件の稼ぐ力」を合算し、追加で数億円規模の融資を引き出せる可能性があります。

 

「住む家」にお金をかける前に、「お金を産む家」を持つ

理想的な戦略は、自宅への過度な投資を抑え、まずは新築アパートなどの「収益物件」を所有することです。新築アパート投資は、「減価償却」という会計上の武器を駆使することで、手残りのキャッシュ(税引き後キャッシュフロー)を最大化できます。これこそが、高所得層がこの投資を選ぶ真の理由です。

収益物件が産む利益で自宅のローンを賄い、さらなる投資へ回す。この「真の資産超過状態」を築くことこそが、本当の意味での「資産家の仲間入り」への唯一の道と言えるでしょう。

 

幻影を捨て、実利を追え

タワーマンションの含み益に浮かれ、生活を膨らませるフェーズは終わりました。金利上昇の足音が聞こえる今、必要なのは「含み益」という不確かな幻影ではなく、毎月通帳に刻まれる「確実なキャッシュフロー」です。

ご自身の属性という最大の武器を、「住居」という消費に費やすのか、それとも「資産を産む事業」へと転換させ、真の自由を勝ち取るのか。その決断が、10年後のあなたと家族の未来図を決定づけることになります。

 

 

<執筆者>

藤原洋子

FP dream/代表FP

大学卒業後、食品メーカーに就職。結婚を機に退職後、専業主婦期間を経て国内大手生命保険会社に転職。営業担当として約12年間、保険商品の販売等を行う。FP資格を活かし、2016年から独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー相談、執筆、勉強会の運営などを行っている。保険の活用と老後を見据えた資金計画、相続について、わかりやすくお伝えしている。