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不動産投資では家賃収入を得ることができますが、そこにはどのような税金がかかり、どのくらい支払う必要があるのでしょうか? シミュレーションをもとに税理士が解説します。
不動産投資における「家賃収入」とは?
アパートやマンションなどの賃貸物件を購入して第三者に貸し出すことで得られる家賃のことを家賃収入と呼びます。家賃と一緒に受け取る共益費や管理費も家賃収入に含まれ、入居の際に受け取る礼金も大きな括りでは家賃収入と呼ぶこともできます。
家賃収入にかかる税金とは?
家賃収入は事業所得や不動産所得として、毎年所得税・住民税が課税されます。1年間の家賃収入から、賃貸物件の減価償却費や固定資産税、ローンの利息、修繕費などの必要経費を差し引いた「不動産所得」に対して課税されます。
まず上記の通り、1年間の家賃収入から必要経費を差し引いて「不動産所得」を計算します。給与など他の収入がある場合は、不動産以外の収入についても「所得金額」を計算し、全ての所得金額を合計して、「総所得金額」を求めます。
次に、1年間で支払った社会保険料や生命保険料等から「所得控除額」を計算します。扶養に入っている配偶者や家族がいるときは、この「所得控除額」に配偶者控除額や扶養控除額などが加算されます。そして、「総所得金額」から「所得控除額」を差し引き、「課税所得金額」を出します。
最後に、「課税所得金額」に所得税や住民税の税率を掛けて、税金の金額を計算します。所得税は、「課税所得金額」が高ければ高いほど税率が高くなる累進課税制度が採用されていますが、住民税は一律で10%の税率が採用されています。
税金はどれくらい? シミュレーションをもとに算出方法を解説
【前提条件】
・給与額面:1,500万円
・建物:5,000万(木造アパート8室)、土地5,000万での購入
・不動産ローン:8,000万円、金利2%
・家賃収入:7万円/室、管理費5%
・固定資産税評価額は時価の70%
・扶養控除は配偶者のみ
まず、「不動産所得」の金額を計算します。
・家賃収入:7万×8戸×12か月=672万円
(必要経費)
・減価償却費:5,000万円÷22年≒227万円
・固定資産税及び都市計画税:47万円
土地 5,000万×70%×1/6×1.4%+5,000万×70%×1/3×0.3%≒12万円)
建物 5,000万×70%×1.4%×1/2+5,000万×70%×0.3%≒35万円)
・不動産管理費:672万円×5%≒34万円
・ローン利息:8,000万円×2%=160万円
合計:227万円+47万円+34万円+160万円=468万円
■不動産所得:672万円-468万円=204万円…(A)
「給与所得」の金額を計算します。給与所得の金額は、額面の金額から給与所得控除額を差し引いて計算します。
■給与所得:1,500万円-195万円=1,305万円…(B)
「不動産所得」と「給与所得」を合計して「総所得金額」を計算します。
■総所得金額:204万円(A)+1,305万円(B)=1,509万円…(C)
次に「所得控除額」を計算します。社会保険料控除については、給与の源泉徴収票に記載されている金額を使うことになりますが、今回は概算金額として額面給与の15%として計算します。
社会保険料控除:1,500万円×15%=225万円
基礎控除:48万円
■合計:273万円…(D)
「総所得金額」から「所得控除額」を差し引いて「課税所得金額」を計算します。
■課税所得金額:1,509万円(C)-273万円(D)=1,236万円…(E)
最後に「課税所得金額」に税率を掛けて、税額を計算します。
所得税:1,236万円(E)×33%-1,536,000円≒255万円
住民税:1,236万円(E)×10%≒124万円*
■税額合計:379万円
参考までに上記の例で、不動産投資をせず、給与のみだけだった場合の税額は290万円ですので、不動産投資による納税額の増加額は約90万円です。
*住民税の計算方法は厳密には異なりますが、今回は概算額として簡便化して計算しております。
不動産投資で忘れてはならない「確定申告」
不動産投資を始めたら毎年必ず確定申告が必要です。1月から12月までの間の収入と必要経費について、翌年2月16日から3月15日までの1か月間で確定申告しなければなりません。その際、青色申告特別控除や医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除等、様々な税金の優遇措置を利用できる可能性があります。できる限り節税に活用していただくと良いでしょう。
確定申告する方法は、マイナンバーカードを作成しておられる方は、e-Taxの確定申告書作成コーナーを活用していただく方法が一番手軽だと思います。源泉徴収票や不動産投資に関する資料を準備しておけば、ご自宅のPCやスマホから確定申告を完了することができます。自分で対応することが難しければ、税務署が開設している確定申告相談会場の利用や税理士への依頼をご検討ください。
今回は、家賃収入に対する税金として所得税と住民税にフォーカスして説明しましたが、不動産投資をする中で他の税金がかかることもあれば、修繕や空室のリスク等、様々な事柄が複雑に絡み合っています。複数の視点から慎重に検討を重ねることが、不動産投資を成功させるために非常に重要です。
著者:西口 孟志
西口孟志税理士事務所税理士
1994年1月30日生まれ。京都府出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本電気株式会社に入社。その後、EY税理士法人等の複数の税理士法人にて、個人事業主から上場企業まで幅広く税務会計の支援に従事。2022年に京都市にて、西口孟志税理士事務所を開業。