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「利回り10%の中古物件なら10年で元が取れるが、利回り5%の新築物件は20年もかかる。投資効率(ROI)を考えれば、新築を選ぶ合理的な理由が見当たらない」普段、ビジネスの最前線で数字を扱っている方ほど、不動産投資においてこのような疑問を抱きます。PL(損益計算書)的な発想に基づけば、この主張は正論でしょう。しかし、多くの高所得会社員の方が、この「正論」のせいで資産形成の機会を逃している、あるいは非効率な投資に手を出してしまっているのが現実です。なぜ、「利回り5%の新築」が「利回り10%の中古」よりも投資として優秀になり得るのか。この記事では、机上の計算だけでは見落としがちな「投資効率の真実」について解説します。

 

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「表面利回り」だけでは見えない「キャッシュフロー」の決定要因

投資効率を計算する際、多くの方が「物件価格を年間の家賃収入で割る」という単純な計算を行います。 これに基づけば、利回り10%(回収10年)は、利回り5%(回収20年)より圧倒的に優秀です。しかし、不動産投資は現金一括で購入しない限り、ここに「銀行融資」というレバレッジが加わります。

実は、手元に残る現金(キャッシュフロー)の額を決定づけるのは、利回りの高さではなく「融資期間(返済期間)の長さ」なのです。 ここに、築古物件と新築物件の決定的な構造差があります。

 

  • 築古物件: 耐用年数が残り少ないため、融資期間が短い(10〜15年など)。
  • 新築物件: 法定耐用年数をフルに活用できるため、長期の融資が組める(35年など)。

 

この「時間のレバレッジ」を計算に入れると、結果は一変します。

利回りが半分でも「手残り」が勝つ理由

具体的な数字で比較してみましょう。条件をわかりやすくするため、以下の設定でシミュレーションします。

 

【前提条件】

  • 借入金額:1億円
  • 金利:2.0%
  • 物件A(築古): 利回り10%(家賃収入1,000万円/年)、返済期間15年
  • 物件B(新築): 利回り5%(家賃収入500万円/年)、返済期間35年

 

この条件で、銀行への年間返済額を算出してみます。

 

【A 築古・利回り10%】の場合

築古木造の場合、銀行評価上の耐用年数切れが近く、融資期間は15年程度が限界となります。 1億円を金利2.0%で15年間借りた場合、計算上の年間返済額は約778万円になります。

 

  • 家賃収入: 1,000万円
  • 銀行返済: 778万円
  • 手残り(概算): 222万円

 

ここから、築古特有の高い修繕費、固定資産税、管理費を引くと、手元に残る現金はごくわずかです。空室が少しでも出れば、キャッシュフローはマイナス(持ち出し)に転落します。

 

【B 新築・利回り5%】の場合

一方、新築は35年の長期ローンが組めます。期間が延びることで、単年度の返済圧力が劇的に下がります。 1億円を金利2.0%で35年間借りた場合、計算上の年間返済額は約400万円まで下がります。

 

  • 家賃収入: 500万円
  • 銀行返済: 400万円
  • 手残り(概算): 100万円

 

「あれ? それでも築古の方が手残りは多いのでは?」と思われたかもしれません。 ここで見落としてはいけないのが、支出の安定性です。

新築物件は、当初10〜15年程度において以下の構造的な強みがあります。

 

  • 大規模修繕がほぼ不要
  • 給湯器・エアコンなどの設備交換リスクが極めて低い

 

そのため、修繕費を含めた「実質キャッシュフロー」は、新築の方が安定しやすいのが実態です。

一方、築古物件では、想定外の修繕が単年度で数十万円〜百万円単位で発生することも珍しくありません。表面上の手残り額では築古が勝って見えても、キャッシュフローの安定性という観点では、新築に軍配が上がるケースが多いのです。

さらに重要なのは「返済比率(家賃に対する返済額の割合)」の安全性です。

 

  • 築古の返済比率:約78%(少しの空室や修繕費でCFがぶれる)
  • 新築の返済比率:約80%(CFのブレが小さい)

 

築古と新築を比べると、数値上はほぼ同じ返済比率に見えます。約80%という数字は一見危険水域にも感じられますが、実は新築の方が安全性は高いといえます。なぜなら、返済比率そのものよりも、変動耐性(ブレの小ささ)の方が、長期投資では重要だからです。

高収入の会社員が新築物件を取得する場合、給与所得の安定性、法人・個人の信用力、物件評価の高さなどを背景に、金利優遇が適用されやすいのが特徴です。 例えば、金利が0.2〜0.3%下がるだけでも、35年ローンでは年間返済額が数十万円単位で圧縮されます。

また、新築物件では団体信用生命保険(団信)の条件が良く、がん団信や三大疾病付きでも金利上乗せが小さいというメリットも享受しやすいため、実質的なリスクコストはさらに低下します。

一方、築古物件では空室リスクが常にあり、家賃の引き下げ圧力も考えられます。新築とは借主の属性が異なる場合が多く、事件や事故などが起これば、一斉に退去が始まるリスクも否定できません。これは机上のROIでは考慮されないリスクであり、確率論では語りにくいものの、現場では無視できない要素です。

これらを加味すると、返済比率の数字以上に、新築物件の方が資金繰りの安全性に余裕が生まれるのです。 長期的な資産形成において重要なのは、「瞬間風速的な利益」ではなく「破綻しない資金繰り」です。期間35年で薄く長く返済することで、毎月確実にキャッシュが手元に溜まる仕組みを作れるのが新築の強みです。

年収3,000万円の人の「時給」を考慮したコスト計算

もう一つ、数字上の利回りには表れない「見えないコスト」があります。それは投資家自身の「時間単価」です。 年収3,000万円クラスの方であれば、ご自身の時給換算は数万円に達するはずです。 築古物件は「ハイリスク・ハイリターン」ではなく、「労働集約型・ミドルリターン」の投資です。

 

  • 設備の故障対応(給湯器、エアコン、雨漏り)
  • 退去ごとのリフォーム見積もり精査
  • 入居付けのための業者回り

 

これらに費やす時間を、ご自身の「時給」でコスト換算してみてください。「利回り10%」からその人件費コストを差し引いた時、実質利回りは5%以下に落ち込むことが多々あります。

一方、新築物件は設備トラブルがほぼなく、客付けも強いため、オーナーの手間は最小限です。本業に集中しながら資産が増えていく。この「不労所得性」の高さこそが、多忙なエリート層にとっての最大のメリットです。

属性(信用力)が高いからこそ勝てる投資

年収3,000万円という属性は、銀行から見れば「もっとも融資を貸したい相手」です。 その信用力があるからこそ、「35年間の長期固定低金利」という、一般人には手の届かない好条件を引き出すことができます。 この高属性というプラチナチケットを、たかだか15年しか借りられない築古物件に使うのは、あまりにも「投資効率」が悪いと言わざるを得ません。

 

  • 信用力を最大限に活かして「期間」を買う。
  • 本業を阻害しない「手間のかからない資産」を持つ。

 

この2点を満たすのが、ROI的には不利にも思える「利回り5%の新築アパート投資」です。

もちろん、すべての人に新築投資が適しているわけではありません。 短期回収や事業的な不動産運用を志向する方にとっては、築古が最適解となる場合もあります。 しかし会社員の不動産投資の場合、目先の表面利回りに惑わされず、時間軸とご自身のリソースを含めた「真の投資効率」で判断することが、もっとも合理的な選択になるケースは少なくありません。

 

〈執筆者〉

長岡 理知

長岡FP事務所

代表

2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。 住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。