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人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは「千葉県柏市」。

東京都心はもちろん、埼玉にも千葉方面にもアクセスできる交通の要所

千葉県の北西部に位置する柏市。松戸市や我孫子市と隣接するほか、市の北部は茨城県との県境で、取手市や守谷市とも接します。

1954年、市制施行以来、首都圏の代表的なベッドタウンとして開発が進み、人口は約43万人。千葉県下では千葉市、松戸市、市川市に次ぐ4番目の規模を誇ります。

市の中心部をJR常磐線が横断するほか、市の西部を東武鉄道野田線(東武アーバンパークライン)が縦断。2005年には市の北部を横断するようにつくばエクスプレス(TX)が開通しました。「柏」から「北千住」へは常磐線快速で20分弱。常磐線では「上野」に直通するほか、「北千住」から東京メトロ千代田線に乗り入れ、45分ほどで東京都心にダイレクトにアクセスすることもできます。また野田線では「大宮」と「船橋」の各方面へ、TXでは「秋葉原」へ、35分程度でアクセス。東京都心方面を中心とした鉄道路線の充実が、ベッドタウンとして発展を続けるひとつの理由です。

またTX沿線では新興住宅地の開発が加速。特に柏の葉エリアはエネルギー効率・エネルギーの経済効率向上に具体的な取り組みを実行している都市であるスマートシティの先駆けで、東京大学や千葉大学など研究機関や産学連携に期待するベンチャー企業などが集積。新たにファミリー層の流入が活発なエリアとして注目を集めています。

道路交通をみていくと、市の北部を常磐自動車道が縦断し、柏ICで東京の郊外を、半円を描くように走る国道16号と交差。JR常磐線に沿うように国道6号が市の中心部を横断し、東京都心へアクセス可能。交通の要所として、市内に多くの物流施設が点在しているのも特徴です。

市内には10の駅がありますが、その中心となるのが「柏」。周辺は千葉県でも屈指の繁華街を形成し、70~80年代にはそごうや髙島屋、丸井などの大型商業施設が進出。ターミナル駅としての機能を果たしています。そごう柏店は2016年に閉店。その跡地の利用に注目が集まってきましたが、今年に入り、解体が決定。2026年には市に土地の引き渡しがされる予定。柏市が主導して一体的な再開発が期待されています。

ファミリー層からの支持が厚い「柏」…人口減少の影響は?

 

では「柏市」の現況についてみていきましょう。2020年に行われた国勢調査によると、柏市の人口は42万6,468人。5年前調査41万3,954人から1万2,514人の増加し、割合にして3.0%増。千葉県全体では1.0%の増加だったので、その3倍もの成長をみせています。

平均年齢は46.73歳。全国平均47.66歳、また千葉県平均48.03歳と比較しても、若い人が多いことがわかります。人口分布を人口ピラミッド(図表1)でみていくと、ボリュームゾーンは40代~50代。働き盛りとその子どもが多く居住するエリアだといえるでしょう。

【図表1】柏市の人口ピラミッド
出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」

 

世帯数は18万7,782世帯で、世帯当たり構成数は2.27人。全国平均2.26人を若干上回り、千葉県平均2.27人と同等です。

世帯構成について詳しくみていくと、施設入居世帯除く一般世帯18万7,782世帯のうち、単身者世帯は6万7,050世帯で、全世帯36.7%。千葉県平均36.2%を上回り、ファミリー層の多い千葉県のなかでも、柏市はその傾向が強いエリアだといえるでしょう。

人の流れをみていくと、昼間人口は33万8,071人。夜間人口は37万3,135人。昼夜間人口比率90.60%で、市外への通勤・通学者が多い、典型的なベッドタウンであることが分かります。そのため不動産投資を考えるのであれば、駅を中心に考えるのが有力な選択肢となります。

各駅の乗降客数をみていくと、【図表2】の通り。乗降客数だけでみると「柏」一強と呼べる状況。同じ常磐線の「南柏」や「北柏」も都心へのアクセスが良好な路線なので、不動産投資を考えるのであれば、選択肢になるだろうエリア。またファミリー物件も視野に入れるなら、物件数は少ないものの、TX沿線も検討するのも一手です。

 


【図表2】西東京市内各駅の乗降客数
出所:西武鉄道ホームページより
※数値は2023年

 

次に家賃相場についてみていきましょう。「柏」駅周辺の家賃相場を大手住宅検索サイト3社の平均でみていくと、1Kで6.90万円、1LDKで10.78万円、2LDKで12.55万円。常磐線で隣駅となる「南柏」駅周辺では、1Kで6.22万円、1LDKで8.85万円、2LDKで11.65万円。「柏」駅のほうが、1Kで10%強、1LDKでは20%強、2LDKで7%強、家賃水準が高くなっています。不動産投資においては、物件取得後の利回りに大きく影響するので、取得予定の物件価格と、家賃水準のバランスはしっかり見極めたいところです。

そんな柏市市の将来像をみていきましょう。国立社会保障・人口問題研究所の推計のなかで、最も楽観的なシミュレーションでは、今後も緩やかに人口増加が続き、2040年には44万人。205年には45万に達します。一方、現実的なパターンでは、今後、緩やかに減少し2050年には40万人を割り込むという予測がされています(図表3)

 

【図表3】柏市の人口推計
出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成
※パターン1:全国の移動率が今後一定程度縮小すると仮定した推計(社人研推計準拠)
シミュレーション1:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇したとした場合のシミュレーション
シミュレーション2:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇し、かつ人口移動が均衡したとした(移動がゼロとなった)場合のシミュレーション。

 

2015年時点での人口を100とした際の年齢別の人口推計をみていくと、2030年、15歳未満の人口は88.85、15~64歳人口が98.8。特に働き盛り世代の人口減少は、2030年~2045年にかけて一段と進むと考えられています。一方で65歳以上の高齢者人口の割合は増え続け、2040年には133.83。2050年ごろまで増え続け、その後、減少に転じると予想されています(図表4)

 

年齢3区【図表4】柏市分別人口推移
出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成

 

都心だけでなく、多方面にアクセス良好な柏市は、特にファミリー層から人気を集め、首都圏でも屈指の人気のベットタウンを形成してきました。昨今はTXの開通により、さらにファミリー層の流入が顕著になっているものの、人口減少の波は柏においても無視できないものとなっています。

このような局面において、不動産投資ではエリア選定がより重要になってきます。現状はもちろんのこと、将来を見据えて有望な地域かどうか、見極めていく必要があります。