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多くが60歳定年でひと区切りをつけるため、資産形成において50代はまさにラストスパートをかけるとき。貯蓄額もぐんと増えるタイミングですが、まさかの事態で資産形成がストップしてしまう場合も。定年前の50代に訪れるまさかの出来事とは?

統計資料に見る50代の資産形成

生命保険文化センターが実施した『2022(令和4)年度生活保障に関する調査』によると、50代の男性は86.3%、50代の女性では89.6%の方が老後生活に対する不安を感じています。 不安の理由としては、「公的年金だけでは不十分」が最も多く、男性では84.1%、女性は85.7%です。

50代は、老後生活に入るまでの間に、貯蓄を減らさないようにしながら、さらに増やしていくことが大切な時期になります。

では、実際のところ50代は、いくらくらい貯蓄をしているのでしょうか? 金融広報委員会が実施した『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年度)』 から、50代が金融資産をどのくらい保有しているか見てみましょう。

出所:金融広報委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年度)』より

上記の表には、「平均値」と「中央値」の2種類が記載されています。平均値は、すべてのデータの値の合計をデータの個数で割って算出される値です。中央値は、データを小さい順あるいは大きい順に並べて、中央に位置する値です。

平均値は少数の極端に大きいデータや極端に小さいデータによって引っ張られることがあるので、実感と異なる印象が生じる可能性があります。平均値だけでなく中央値も示すことで、実感に近い値となると考えられています。

したがって、50代の金融資産を保有している世帯だけを調査すると中央値は700万円となるので、700万円くらいの貯蓄額の人が多いと考えられます。一方、金融遺産を保有していない世帯を含む調査では、中央値は230万円となります。

資産形成における「親の介護」という落とし穴

2023年の総務省の調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯 では、公的年金等の収入より支出のほうが3.8万円、単身の無職世帯 では3.1万円多いとされています。毎月の不足分は、貯蓄から使うとことになるでしょう。

65歳から25年間に必要な年金以外の生活費の合計は、夫婦であれば「3.8万円×12ヵ月×25年=1,140万円」です。単身の世帯では、930万円となります。老後資金は生活費だけでなく、旅行やレジャー、趣味、教養、車の買い替えなど、日常をより充実させるための上乗せ額 があれば、ゆとりのある老後生活が送れることになります。

その世帯の暮らし方によって異なりますが、家のリフォーム費用、子どもの結婚費用の援助、孫の教育費の援助なども準備しておきたい、というケースもあるでしょう。何にどのくらいの費用をかけたいか事前に検討しておくことが重要です。

一方で、多くが長寿である現代社会では、介護問題はどの世帯にも起こる可能性があります。年代別の人口に占める要支援・要介護認定者の割合は、80歳~84歳では26%、85歳以上では59.5%という調査結果があります。

親を自分が介護する立場になるかもしれません。親の介護に際し「肉体的・精神的負担」「自分の時間が今までのように使えない」という不満を感じているケースも多いようです。さらに「経済的な負担」が発生する可能性もあるでしょう。

最悪「介護離職」という結末を迎えたら

総務省の調査 では、介護者の数は、45歳から増え始め、50歳から54歳では90.9万人。5歳から59歳でピークとなり110.4万人となっています。それに伴い、介護をしながら仕事をしている人の割合も50代でピークとなります。

介護離職は、介護が必要になった家族のために介護に専念しようと、介護者が仕事を辞めてしまうこと。年間に介護を理由として仕事を辞める人は10万人ほどいます。

50代は、課長職や部長職など社内で重要なポジションに就く人が多い年代です。介護は仕事に大きな影響を与えるでしょう。やむを得ず介護離職を選択することになるケースは多く、また介護が終わった後の再就職も厳しいという現実があります。

まさかのライフイベントに強い「不動産投資」での資産形成

介護離職のような、まさかのライフイベントに備えるために、不動産投資はひとつの選択肢になります。不動産投資は、長期的な視点で行うことで、家賃収入による利益を得ることができます。株式投資と比べると不景気の影響を受けにくく、急激に家賃相場が下がることもありません。インフレの状況では不動産の価値が上昇し家賃収入のアップも期待できます。物件購入後に発生する建物管理や既存入居者への対応など、さまざまな管理業務は賃貸管理会社に委託することができるので、本業である仕事に支障をきたすこともありません。

しかし安定的な賃貸収入を得られるメリットがある一方で、空室による家賃収入の減少、自然災害による損壊、金利上昇によるローン返済不能など、注意すべき点もあり、リスク対策は欠かすことはできません。

不動産投資を行う場合は、目的を決めしっかりとした投資計画を立てることが重要ですし、物件の選び方など、不動産投資の勉強も必須です。そのうえで信頼できる不動産業者を見つけることができるかが、成功の分かれ道となります。ライフイベントにおけるリスクを踏まえながら、資産形成に向けて早めに動き出すことが重要です。

 

 

著者:藤原 洋子

FP dream 代表FP

大学卒業後、食品メーカーに就職。結婚を機に退職後、専業主婦期間を経て国内大手生命保険会社に転職。営業担当として約12年間、保険商品の販売等を行う。FP資格を活かし、2016年から独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー相談、執筆、勉強会の運営などを行っている。保険の活用と老後を見据えた資金計画、相続について、わかりやすくお伝えしている。