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不動産投資の税負担を抑えるためには税の知識が不可欠です。今回は、不動産投資の第一歩となる物件購入時の消費税について。何に消費税がかかり、かからないのか。判断基準を中心に税理士が解説します。

不動産購入…消費税が課税対象になるのは?

不動産を購入、取得した際には様々な費用が発生します。これらの費用は高額になることが多く、消費税が課税されるかどうかも気になることでしょう。また、不動産投資を始めると、毎年不動産所得として確定申告をすることになるので、消費税額がいくらなのか確認しておくことは重要です。

不動産の購入時の費用は下記の通り、消費税のかかるものとかからないものがあります。

【消費税の課税対象となる費用】

  • 建物の購入金額、工事代金
  • 建物分の固定資産税精算金
  • 土地及び建物の仲介手数料

【消費税の課税対象とならない費用】

  • 土地の購入金額
  • 土地分の固定資産税精算金
  • 不動産取得税、印紙税

不動産取引で「非課税」になるケース

不動産の売買において、消費税がかかるかどうかの基準は、建物を購入したのか、土地を購入したのか、がポイントです。建物を購入した場合には、その建物が住宅用であれ、店舗や事務所用であれ、使用用途に関わらず、消費税がかかります。土地を購入した場合には、消費税はかかりません。

判断が難しいケースとして、駐車場を購入した場合があります。駐車場は土地の購入にあたるので、基本的には消費税はかからないのですが、駐車場の設備としてアスファルトや料金設備、車止め等も一緒に購入する場合は、設備分の金額には消費税がかかります。

また不動産売買時にかかる不動産取得税や印紙税などの税金には当然消費税はかかりません。ただし固定資産税相当額については注意が必要です。商慣習として、不動産を売買する際に、買主が本体の金額に加えて経過期間に応じた固定資産税相当額を支払うことが一般的です。そもそも固定資産税は1月1日に不動産を保有している人に対して課される税金ですので、年の途中で不動産を購入した人は、その年の固定資産税を納税する義務はありません。支払う固定資産税相当額は、名目こそ税と付いていますが、建物や土地の代金の追加料金として扱われることになります。そのため、建物分の固定資産税相当額には消費税がかかり、土地分の固定資産税相当額には消費税はかかりません。

どうする?「土地建物の区分」が分からないとき

不動産を購入する際に、合計の金額しか把握しておらず、土地と建物それぞれの区分や金額が分からないということもあるでしょう。その場合は、原則として不動産売買契約書に記載されている金額に従って考えることになります。

契約書によって記載方法は様々で、土地の金額OO円、建物の金額△△円と分かれて記載されていることもあれば、合計金額OO円(消費税XX円を含む)のようにまとめて記載されていることもあります。

たとえば、合計金額1億円(消費税500万円を含む)と記載されているときは、まず建物の金額から計算します。

 

500万円÷10%=5,000万円

5,000万円+500万円=5,500万円

 

上記の式で計算できるように、建物の本体価格が5,000万円で消費税込みの金額が5,500万円だと分かります。そうすると残りの4,500万円が土地の価格だと判断できます。

どうする?契約書に「消費税額が書かれていない」とき

不動産購入時の消費税は、契約書に記載されている金額で計算することになるのですが、契約書に区分や消費税の金額が一切記載されていないこともあります。その場合は、まず売主や不動産会社に確認してみることをお勧めします。それでも分からないときには、何らかの合理的な方法で、建物分の金額と土地分の金額とに按分をして計算することになります。

一番多く利用されている方法は、直近の建物と土地の固定資産税評価額を用いて按分計算をする方法です。固定資産税評価額は、毎年4月頃に固定資産税の納付書と一緒に届く固定資産税の課税明細に記載されています。固定資産税相当額の支払がある場合には、その計算明細にも固定資産税の評価額が記載されている場合があります。新築の場合は数ヵ月待たないといけませんが、市町村に申請すれば、固定資産税評価証明書を取得することもできます。

たとえば、総額1億円(消費税を含む)で土地と建物を購入した場合、固定資産税評価額が、土地5,000万円、建物3,000万円だとすると、それぞれの金額は以下の計算を行います。

 

土地:1億円×(5,000万円/8,000万円)=6,250万円

建物:1億円×(3,000万円/8,000万円)=3,750万円(消費税込み)

建物分の消費税:3,750万円×(10%/110%)=3,409,090円

 

その他の合理的な方法として、不動産鑑定士による土地と建物の鑑定金額を根拠に按分計算を行うという方法もあります。

どの方法で計算するかによって、土地と建物の金額が違ってくることがあり、その結果、確定申告時の利益にも影響が出る可能性があります。どんな方法で計算しても良いという訳ではなく、客観的に合理的だと判断できる根拠に基づいて計算するということに留意しましょう。

 

 

著者:西口 孟志

西口孟志税理士事務所税理士

1994年1月30日生まれ。京都府出身。

同志社大学経済学部卒業後、日本電気株式会社に入社。その後、EY税理士法人等の複数の税理士法人にて、個人事業主から上場企業まで幅広く税務会計の支援に従事。2022年に京都市にて、西口孟志税理士事務所を開業。