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世帯年収3,000万円クラスの高所得層が陥りやすいのが「節税」に関する過信です。医療費控除、生命保険料控除、iDeCoの活用、ふるさと納税……確かにお得ではあるものの、それで満足してしまい、肝心な資産形成が遅れるケースも少なくありません。本記事では「節税対策」と「資産形成」を両立させる方法として、不動産投資、特にアパート投資の活用法をFPの視点から解説します。


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高所得層がハマる「節税の落とし穴」の正体

サラリーマンは、経費を計上する代わりに給与所得控除が適用されます。給与所得控除は、年収850万円を超えると195万円が上限となります。

 

年収が高くなれば、社会保険料の負担額は高くなり、所得税の税率も上がります。たとえば、課税所得が1,800万円以上4,000万円未満なら、税率40%と控除279万6,000円です。高所得者層にとって、お金を手元に残せる「節税」は魅力的な関心事といえるでしょう。

 

高所得者層の多くの方は、生命保険料控除、iDeCo、ふるさと納税、会社設立といった制度を利用しています。しかし、これらの節税対策は資産形成に結びつかず、ときとして「節税の落とし穴」にはまる可能性をはらんでいます。

 

たとえば、生命保険料控除の対象となるのは、支払った保険料のうち、一定額までが対象となります。iDeCoは、税制優遇措置が設けられていますが、原則60歳になるまで資金を引き出すことができません。ふるさと納税は、消費の側面が大きいです。

 

会社設立についてはどうでしょう。法人化すると、所得税ではなく法人税が適用されるので、税率は最大23.2%に抑えることができます。一方で、安易に法人化すると、運営のための費用や税務・法務の複雑さによって、本来の業務に支障をきたす恐れが生じます。経費にできるからと高額なものを購入すると、節税効果よりも現金が流出してしまいます。

 

目先のメリットに目を奪われて、不要な保険への加入や換金性の低い制度の過度な活用、不要な支出などで、必要なときに手元に資金がない「節税貧乏」(節税のために資金を使い、いざという時に手元に現金がない状態)に陥ることも少なくありません。長期的な資産形成のために、節税対策と資産形成のバランスを意識して、本質的な資産増加を目指す視点を大切にしましょう。

節税しながら資産形成するには?

高収入のサラリーマンにとって魅力的なテーマである節税。節税の本質的な部分を理解することが重要です。節税対策を「目的」ととらえてしまうと、本末転倒な選択をしてしまう可能性があります。本来の目的は、手元に残る資産を大きくし、豊かな将来を築き上げることにあるはずです。節税対策は、「資産を増やしながら税負担を最適化する、資産形成のための有効な手段」と思考法を転換することが、「節税貧乏」を回避し資産形成を進める第一歩となります。

 

資産形成と節税対策を両立させる、という視点から鍵となるのは、「流動性」「利回り」「税制優遇」の三拍子が揃った投資商品を見極めることです。

 

流動性とは、必要なときに大きな損失を被ることなく、その資産を処分できる度合いのことを指します。緊急時にも対応できるように、一定の流動性がある資産を保有することが重要です。

 

利回りは、投資した元本に対し、どれくらいの期間でどれくらいの利益が得られるかを示す収益率のことです。長期的な資産形成には欠かせません。

 

税制優遇は、収益を得たときに税負担が軽減できることで、手元に残る資産を増やす効果があります。

 

これらの条件を満たす代表的な投資商品を扱っている投資制度が、iDeCoとNISAです。 iDeCoは、極めて高い税制優遇が魅力ですが、老後資金の形成に特化されているため、流動性に課題があります。したがってNISAで流動性を確保しながら、ご自身のライフプランやリスク許容度に合わせてバランスよく投資することが、賢く資産形成を進める王道といえるでしょう。

不動産投資の節税効果とキャッシュフロー

不動産投資は、高所得者にとって魅力的な節税対策の一つとして注目されています。その最大のポイントは、「減価償却による所得圧縮」です。建物や設備の価値は時間と共に減少するという考えのもと、取得費用を耐用年数に応じて毎年経費として計上することができます。実際に現金を支払うわけではない「減価償却費」が不動産所得から差し引かれるため、結果として所得税・住民税の負担軽減につながります。

 

特に、法定耐用年数の短い木造アパートなどは、比較的短期間となりますが大きな減価償却費を計上できるので、その期間の節税効果が高まります。

 

さらに、不動産所得では、減価償却費のほかに、固定資産税、管理費、修繕費、ローンの金利などのさまざまな費用を経費として計上できます。そのため、事業を続けている間は、効率的に所得を圧縮することが可能です。

 

経費が家賃収入を上回り、不動産所得が赤字となった年は、給与所得などほかの所得を損益通算して全体の課税所得を減らすことができます。確定申告を行うと、源泉徴収された所得税の還付を受けられるのもメリットです。

 

しかし、重要なのは、節税効果だけでなく、将来のキャッシュフローを見据えた中長期的な視点です。減価償却費はその期間が終了すると節税効果は薄れます。結果として課税所得が大きくなり税負担が増加するため、手元に残る資金が少なくなる「節税貧乏」に陥るリスクがあります。

 

不動産投資において、健全なキャッシュフローとは、手元の資金が安定的に残る状態を指します。空室リスクや金利変動リスクも考慮し、物件の立地や築年数、家賃設定などをしっかり吟味しましょう。将来的な修繕費や売却時の課税も踏まえ、事前に綿密な収益シミュレーションを作成し、長期的な視野で戦略を立てることが大切です。

アパート投資が高所得層にフィットする理由

高所得のサラリーマンが資産形成を考える際、アパート投資は安定した収入源として大きな魅力があります。

 

まず、複数の住戸から家賃収入を得られるので、一室が空室になって収入が途絶えるというリスクを回避できます。安定した家賃収入は、給与所得とは異なるキャッシュフローを生み出し、将来の不安の軽減に貢献します。

 

次に、多忙な高所得者にとって、管理・運営のアウトソース化によって時間的負担を軽減できる点も大きな魅力です。アパート経営は、入居者募集、賃貸管理、建物の維持管理に至るまで、さまざまな業務が伴います。これらの業務は、専門の不動産管理会社に委託することが可能です。これによって本業に支障をきたすことなく、効率的に不動産投資の恩恵を享受できます。

 

そして、アパート投資は、法人化との相性が良いとされています。減価償却の扱いも自由度が高くなり、経費に計上できる費用の範囲が広がるなど、さまざまな税務上のメリットを享受できます。さらに、将来的な売却も視野に入れたプランニング、家族への所得分散や相続対策としても有効です。

 

これらのことから、アパート投資は、安定収入、時間効率の良さ、単なる節税に終わらない攻めの節税対策という点で、高所得者層のライフスタイルと資産形成戦略にしっかりフィットする投資手法といえるでしょう。

 

 

〈執筆者〉

藤原 洋子

FP dream/代表FP

大学卒業後、食品メーカーに就職。結婚を機に退職後、専業主婦期間を経て国内大手生命保険会社に転職。営業担当として約12年間、保険商品の販売等を行う。FP資格を活かし、2016年から独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー相談、執筆、勉強会の運営などを行っている。保険の活用と老後を見据えた資金計画、相続について、わかりやすくお伝えしている。