
目次
「資産形成の次の一手として不動産投資を考えているが、自己資金を入れるべきか、それともフルローンでも問題ないのか」 これは不動産投資において多くの人が抱える悩みです。 高年収の方は金融機関からの信用も厚く、不動産投資において「フルローン」という有利な選択肢が与えられやすい一方で、その選択肢をどう扱うべきか判断に迷うでしょう。 この記事では、FPへの相談事例をもとに、フルローンのメリットとリスク、そして戦略的な活用方法を解説します。
大人気の新築木造1棟アパート「カインドネスシリーズ」資料請求はコチラ>>>
「フルローンで不動産投資」のメリット
[事例]
Aさん/45歳/IT系企業の管理職
年収…3,000万円
金融資産…4,000万円
Aさんは東京都内のIT系企業で管理職をしている45歳です。 将来の年金への不安や、インフレによる資産の目減りなどに不安を覚え、10年ほど前から資産運用に取り組んでいます。これまでは投資信託を中心とした金融投資ばかりでしたが、今後はポートフォリオに不動産投資も組み入れていこうと考えています。
最近、不動産会社から、都内近郊・駅徒歩10分圏内という好立地に建つ新築一棟アパート(価格7,000万円)を提案されました。Aさんの属性であれば、物件価格の全額を融資する「フルローン」が可能だと言います。 しかし、Aさんはフルローンに極めて懐疑的です。
「確かに手元の4,000万円を使わずに投資を始められるのは魅力的。しかし、7,000万円もの借金を背負うことに抵抗がある。まだマイホームも買ってない。本当にフルローンで進めて大丈夫なのだろうか」
Aさんのように、高年収で自己資金も潤沢な方が、なぜあえてフルローンを検討するのでしょうか。それは、フルローンが単なる「借金」ではなく、資産形成を加速させるための強力なレバレッジとして機能するからです。
フルローンには3つのメリットがあります。
メリット1:手元資金の温存と機会損失の回避
最大のメリットは、4,000万円の金融資産に手を付けずに済むことです。手元資金は、万が一の事態(失業、病気、大規模修繕など)に備えるためのリスク対策資金として、あるいは株式市場の急落時など、突発的な投資チャンスが訪れた際の資金として温存できます。もし自己資金を投じていれば、その分の投資機会を失う「機会損失」につながる可能性もあります。
メリット2:レバレッジ効果の最大化
不動産投資の醍醐味は、他人資本(=融資)を使って、自己資金だけでは成し得ない規模の資産を築ける点にあります。フルローンは、このレバレッジを最大化できます。仮に年間6%の利回りが得られる物件であれば、7,000万円の物件から年間420万円の家賃収入が生まれます。もちろん借入金の返済が必要ですが、自己資金ゼロでこの毎月のキャッシュフローを得られるのが、フルローンの魅力です。
メリット3:資産の拡大スピードが上がる
手元資金を温存できるということは、2棟目、3棟目の物件取得をスピーディーに進められる可能性も意味します。1棟目の経営が軌道に乗り、キャッシュフローが安定すれば、その実績を基に金融機関から次の融資を引き出しやすくなります。自己資金を最初の物件に集中させてしまうと、次のチャンスが訪れても動けなくなります。フルローンは、短期間で資産規模を拡大したいと考える方にとって、有効な戦略となります。 (ただし出口戦略を間違えると逆に複数棟の取得ができなくなるため注意)
「フルローンで不動産投資」のリスク
フルローンはメリットばかりではありません。レバレッジを最大化する分、リスクも大きくなります。 リスクも3つ挙げてみます。
リスク1:キャッシュフロー計画がギリギリになる
フルローンは借入額が大きくなるため、毎月の返済額も高額になります。その結果、家賃収入から税金などの経費とローン返済を差し引いた手残りが薄くなる傾向があります。 特に新築アパートは、当初の家賃設定が高めであるため、シミュレーション上は魅力的に見えます。しかし、数年後には周辺相場に合わせて家賃が下落するリスクがあります。また、予期せぬ空室や設備の修繕が発生した場合、容易に収支は赤字化するでしょう。 そうなると手元の資金から持ち出しを迫られます。フルローンで手元資金を残しても、その資金がどんどん目減りするリスクはあります。
リスク2:金利上昇リスクへの備え
フルローンは金利上昇リスクを負います。例えば、7,000万円を変動金利2%、35年で借り入れた場合、月々の返済額は約23万円です。しかし、金利が1%上昇して3%になると、返済額は約27万円に跳ね上がります。年間で48万円もの負担増です。 自己資金を入れていると、ローン元金が少ないため上昇幅は少なくなります。 金利の上昇幅を吸収できるだけのキャッシュフローがあるかどうか精査する必要があります。
リスク3:出口戦略(売却)が難しくなる
不動産投資は、売却時の利益(キャピタルゲイン)が目的です。しかしフルローンの場合、売却時にローン残債が残っていると、売却価格がローン残債を下回ることがあります。これでは不動産投資は失敗といえます。 購入時に、数年後、数十年後の市況や物件価値をある程度予測し、「いくらで売れそうか」「その時のローン残債はいくらか」という出口戦略を見据えておくことが重要です。日本は人口減の社会に突入しているため、10年後に近所の小学校が廃校になり借り手が減るという事態もありえます。
「自分に合った」ローン戦略の立て方 では、Aさんのような方は、具体的にどのような判断をすればよいのでしょうか。 自己資金の投入割合別にシミュレーションしてみます。
【シミュレーション前提】
物件価格:7,000万円(新築一棟アパート)
家賃収入:(表面利回り6%)420万円/年
経費:(家賃収入の20%)84万円/年
ローン条件:金利2%、期間30年
A.フルローンの場合
借入額:7,000万円
年間返済額:約310万円
税引前キャッシュフロー:420万円-84万円-310万円=26万円/年
B.自己資金2割の場合(自己資金1,400万円)
借入額:5,600万円
年間返済額:約248万円
税引前キャッシュフロー:420万円-84万円-248万円=88万円/年
自己資金を1,400万円投入することで、年間のキャッシュフローは62万円増加します。
安定志なら…毎月の安定した手残りを重視し、突発的な支出に余裕をもって対応したいと考えるなら、Bのように自己資金をある程度投入すべきです。本業の収入にプラスして、年間80万円以上の不労所得が得られる安心感は大きな魅力です。
節税重視なら…新築物件は減価償却を長く取れるため、節税効果を最大化したい場合に有効です。手元資金は次の物件取得のために温存し、最短で資産規模を拡大したい投資家であれば、Aのフルローン戦略が有効です。ただし出口戦略を間違えると、売却、買い増しが困難になるので注意です。
複数棟取得志向なら…経営規模を大きくしていくことが、不動産投資によって大きな利益を上げる確実な方法です。定期的に物件を買い増ししていく際、最初の物件をフルローンで購入していると、担保価値が下がり買い増しに悪影響が出ることがあります。経営規模を拡大したいのであれば、フルローンではなくむしろ自己資金を投入した方が安全です。
このようにフルローンで行くか、自己資金を入れるかという判断は、将来の経営戦略によります。自分が不動産投資で何を求めているか、すなわち規模拡大で収益をあげていくことか、節税を優先するのか、一棟だけをコツコツ運用し続けたいのか、それぞれでフルローンの扱いが変わっていきます。
〈執筆者〉
長岡 理知
長岡FP事務所
代表
2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。 住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。