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多忙を極める高所得の専門職の方々にとって、資産形成は後回しになりがちです。しかし、中途半端な節税対策や、時間がないからと放置している間に、せっかく築いた資産が知らず知らずのうちに目減りしているケースも少なくありません。本記事では、多忙な医師が陥りやすい「節税貧乏」の罠に焦点を当て、本業に支障をきたすことなく、効率的に資産を増やしながら賢く節税できる実践的な方法をFPが徹底解説します。

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「時間がない」を言い訳にしない…賢い資産形成の第一歩

Mさんは東京都内の大学病院に勤務する40代の医師。独身です。年収は約2,000万円。専門は脳外科で、使命感を強く感じながら多くの患者さんの病気と向き合っています。朝早くから深夜まで及ぶ手術や外来、休日や深夜のオンコールも多く、毎日の生活の大半が仕事。プライベートの時間は自宅のソファで横になっているだけです。

 

Mさんの悩みは多忙な医師に共通の課題です。日々の激務のなかでは資産運用について考える時間的精神的余裕がないのです。

 

税金についても調べる余裕がありません。年収2,000万円以上あるはずが、手元に残るのは1,300万円ほど。所得税だけで約374万円の支払いがあります。節税対策が必要だと思っているし、同僚の多くが何かしらの節税の仕組みを構築しているようです。しかし、それについての情報交換をするほどの余裕もありません。

 

「僕は結婚もしなかったし子供もいない。毎日真剣に患者の命を救っているけれど、自分の人生や健康には無頓着。もし自分が脳出血で倒れ仕事ができなくなったらどうなるのか、時々考える年齢になりました。お金のことについて将来に向けて対策を始めたいと思っているけれど……」

 

そうMさんは考えています。年間1,300万円ほどは手元に残るので一般的な会社員と比べたら高所得ですが、苛烈な労働時間によっていつ自分が倒れるか分からない状況では決して安心できる金額ではありません。

 

Mさんのように多忙な医師は、時間の余裕の無さから資産運用や節税対策を後回しにしがちです。

 

そんな医師が資産形成に踏み出すにはどうすれば良いでしょうか。

 

まずは自分が置かれている環境から、できることとできないことを明確にしておく必要があります。

 

多忙な人に不向きな投資は次のようなものです。

 

・短期売買をするもの(デイトレードなど)

・個別株投資

 

短期売買は株式や外貨などを短期間で売買し小さな利益を積み上げるタイプの投資です。副業には向いておらず、一日の時間をすべて使える状態にいない限りおすすめできません。

 

個別株投資は長期保有をするなら時間がかからないと思いがちですが、企業分析を常に行う必要があります。財務状況、事業の将来性、競合他社などチェックする項目がたくさんあり、そのための勉強と知識のアップデートが必要です。

 

この二つの投資は多忙な医師には不向きで、たとえ投資原資があったとしても「できないこと」に含めていいでしょう。

多忙な医師に向いている投資手法とは

実は医師に向いている投資手法は、不動産投資。それも、J-REIT(不動産投資信託)や不動産クラウドファンディングのような間接投資ではなく、現物所有による投資です。不動産の現物投資は、時間が奪われず、かつ節税対策にもなります。その理由についてみていきましょう。

 

①物件管理に携わる必要が少ない

専門の不動産管理会社に委託することで、入居者募集、家賃回収、建物の定期メンテナンス、クレーム対応など、日常的な管理業務のほとんどを任せることができます。基本的に「オーナー」として、管理会社からの報告を受けるだけで済みます。

 

②レバレッジ効果

自己資金だけではなく、金融機関からの融資を活用することで、自己資金以上の大きな金額で投資を行うことができます。これによって効率的に資産を拡大できる可能性があります。医師の社会的信用と高い収入は、金融機関からの融資を受ける上で有利に働きます。借入れをして投資すると聞くと、リスクを感じるかもしれません。しかし借入れを行うことによって投資効率を上げるとともに節税にもつながります。

 

③安定したキャッシュフロー

不動産投資の大きな魅力は、毎月安定した家賃収入が得られることです。これにより、本業とは別の収入源を確保できます。

不動産投資の魅力のひとつである「節税効果」

不動産投資は高い節税効果が期待できる点も大きな魅力です。特に年収2,000万円以上の場合は不動産投資の節税効果を十分に享受することが可能になります。

 

節税になる理由①減価償却費の経費計上

不動産の建物部分や設備は、時間の経過とともに価値が減少するという考え方(減価償却)に基づき、その費用を毎年経費として計上できます。この減価償却費は、実際に現金が出ていく費用ではありませんが、確定申告では所得から差し引くことができます。帳簿上は赤字であっても、実際にはキャッシュが手元に残るという「節税」効果が期待できるのです。

 

節税になる理由②支払利息の経費計上

所得から差し引けるのは減価償却費だけではありません。借り入れによって生じた支払利息分も経費計上できるのです。

 

節税になる理由③損益通算

上記ふたつ以外にも、固定資産税、管理費、修繕費などを経費計上できます。これによって会計上の赤字が出た場合、この赤字を給与所得など他の所得と損益通算することができます。たとえば、不動産所得で100万円の赤字が出たら、給与所得から100万円を差し引いて所得税・住民税を計算できるため、税負担を大きく軽減できる可能性があります。

 

最後に誤解を避けるためにいうと、不動産投資が節税となる条件は、「減価償却費」によって、会計上の赤字を出していることです。家賃収入よりも実際に支出する経費が多く、「キャッシュフロー上の赤字」を出してしまうと、節税にはなるかもしれませんが、不動産事業としては失敗しています。

 

節税分よりも赤字で失ったキャッシュのほうが多くなるのは、ナンセンスといえます。

 

このように、不動産投資は時間の自由と、節税の両方を満たす投資になりえます。しかし、不動産投資には信頼できるパートナーが欠かせません。物件の選定、立地戦略、出口戦略などを立案してくれるパートナーがいれば心強くなります。

 

 

〈執筆者〉

長岡 理知

長岡FP事務所

代表

2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。 住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。