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人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは「相模大野」駅。

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伊勢丹跡地にタワマンを核とした複合施設計画進行中

神奈川県の北部に位置する相模原市南区。その中心であり、交通の要衝となっているのが小田急小田原線と小田急江ノ島線が乗り入れる「相模大野」駅です。

 

神奈川県内有数のターミナル駅として、一日あたりの乗降人員は約11万人を超え(2023年度実績)、小田急線内で9番目。

 

【小田急線乗降客数(2023年度)】

1位「新宿」439,840

2位「代々木上原」257,017

3位「町田」254,478

4位「藤沢」156,546

5位「登戸」155,310

6位「海老名」132,467

7位「本厚木」123,159

8位「下北沢」118,852

9位「相模大野」115,246人

 

都心へのアクセスも非常に良好で、小田急小田原線を利用すれば「新宿」駅まで特急を使えば乗り換えなしで約35分、急行でも約45分。また、小田急江ノ島線で「藤沢」駅へは約25分。また「代々木上原」で降りた反対側のホームで千代田線に乗り換えれば、「表参道」「霞ヶ関」「大手町」と、都心の主要エリアにリーチできます。また隣駅「町田」からはJR横浜線で、「横浜」や「八王子」にもアクセス可能。通勤・通学はもちろんのこと、レジャーにも便利な立地です。

 

かつてこの地には旧日本陸軍の巨大な施設群が存在していました。昭和初期、相模原市の広大な丘陵地帯に陸軍が設けたのが「相模陸軍造兵廠」および「相模陸軍病院(のちの国立相模原病院)」です。これらの施設は、戦時中に軍需物資や弾薬の製造・整備を担い、相模大野一帯は軍都として発展しました。

 

戦後、これらの軍用地はアメリカ軍に接収されましたが、1950年代から段階的に返還され、住宅地や公共施設へと転用されました。この転機こそが、相模大野の都市化の始まりです。特に1960〜70年代には、東京都心の過密を背景に相模原市全体が「首都圏の衛星都市」として注目され、大規模な区画整理事業とともにベッドタウン化が進行。軍施設跡地に次々と住宅、学校、病院、商業施設が建設され、相模大野は南区の核としての役割を確立していきました。

 

1990年には「伊勢丹相模原店」が開業。1992年には「相模大野ジョイモアーズ」、1996年には駅・線路上に駅ビル「相模大野ステーションスクエア」、2013年に大型複合施設「ボーノ相模大野」がオープン。北口を中心に大型商業施設や商店街の集積がみられましたが、2019年9月に街の象徴だった「伊勢丹」が閉店。“百貨店がなくなった街”として、地位低下が懸念されました。

 

しかしその跡地は、野村不動産による再開発計画が進行中。「相模大野4丁目計画」として、約1万平方メートルの敷地に41階建ての高層マンションと商業・地域貢献施設が建設される予定です。この計画では、24時間開放の歩行者専用デッキや、マルシェやフリーマーケットが開催可能な広場、カフェやスーパーの設置などが検討されています。

 

相模大野は商業だけでなく、文化・公共施設も充実しています。神奈川県立相模原公園や相模原市立相模野中央公園といった大規模な公園が点在し、豊かな自然に触れる機会が多いのも魅力です。特に相模原公園は、広大な敷地に四季折々の花が咲き誇る温室や日本庭園、多目的広場などがあり、市民の憩いの場となっています。

 

また、駅から徒歩圏内には、演劇やコンサートなどが開催される「相模女子大学グリーンホール」や、様々なイベントが行われる「ユニコムプラザさがみはら」といった施設があり、文化・芸術活動も盛んです。「相模女子大学」や「北里大学」などのキャンパスも近隣にあるため、アカデミックな雰囲気も漂います。

 

相模原市南区の中心「相模大野」の未来は?

では、相模大野周辺の現況について詳しくみていきましょう。2020年に行われた国勢調査によると、「相模大野」のある相模原市南区の人口は28万1,411人。5年前調査の27万7,280人から4,131人、1.49%の増加を記録しました。また、世帯数は13万2,931世帯。5年前調査から9,165世帯、7.41%増加しています。人口増以上に世帯数増が突出していることから、2人以上の家族層流入が顕著だったと推測されます。

 

人口分布を人口ピラミッド(図表1)でみていくと、ボリュームゾーンは40代後半~50代前半の働き盛り。また他の自治体と比べて20代が多いのも特徴で、特に20代前半の女性が多いのは、女子大の存在が大きいと考えられます。

 

【図表1】相模原市南区の人口ピラミッド出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」

 

人の流れをみていくと、昼間人口は23万8,789人に対し、夜間人口は28万1,411人で、昼夜人口比率は84.85%。昼間、通勤や通学で市域外へと流出する、典型的なベッドタウンの特徴を表しています。

 

相模原市への流入数は7万8,555人。地域別にみていくと「東京都町田市」からの流入が最も多く、全体の18.11%。「神奈川県横浜市」(15.37%)、「東京都八王子市」(8.99%)と続きます。年齢別では「20~24歳」が最も多く11.60%。僅差で「15~19歳」が11.53%と続きます。近隣からの通学者が多いと推測されます。

 

一方で流出数は15万8,717人。地域別にみていくと、「神奈川県横浜市」への流出が最も多く15.72%。「神奈川県町田市」(11.76%)、「東京都八王子市」(7.56%)と続きます。また年齢別では「45~49歳」が最も多く12.28%。「50~54歳」(11.23%)、「20~24歳」(10.51%)と続きます。地域別では6位に「東京都新宿区」(4.12%)、8位「東京都千代田区」(3.56%)、9位「東京都港区」(3.46%)と東京都心方面への流出が見られるものの、隣接する「町田市」と比べると、その割合は少なめ。都心への好アクセスであるものの、移動の中心は近隣自治体が主であるのが特徴です。

 

次に家賃相場についてみていきましょう。「相模大野」駅周辺の家賃相場を大手住宅検索サイト3社の平均でみていくと、1Kが7.5万円、2LDKが13.5万円、3LDKが22.6万円。隣接する「町田」駅と同程度ではあるものの、都心と比べるとかなりリーズナブル。また物件数も1Kで7,000件を超える物件がヒットするなど、物件数が豊富なのも相模大野の特徴です。借主目線では、豊富な物件から自分にあったものを選びやすい、大家目線でいえば競合が多いといえそうです。

 

そんな相模原市/「相模大野」駅周辺の将来像をみていきましょう。国立社会保障・人口問題研究所の推計のなかで、最も楽観的なシミュレーションでも、人口減が予想されている相模原市。現在70万人を超える人口を抱える政令指定都市ではありますが、2040年には70万人を割り込む予想も。

 

【図表2】相模原の人口推計出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成
※パターン1:全国の移動率が今後一定程度縮小すると仮定した推計(社人研推計に準拠)
シミュレーション1:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準は2.1)まで上昇したとした場合のシミュレーション
シミュレーション2:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇し、かつ人口移動が均衡したとした(移動がゼロとなった)場合のシミュレーション

 

また2015年時点での人口を100とした際の年齢別の人口推計をみていくと、65歳未満の年少人口、生産年齢人口ともに、2040年には7割台、2060年には6割台まで減少します。一方、増加するのが高齢者。2040年代にかけて、2015年比140%まで増加。2050年以降は緩やかに減少していきます。

 

 

【図表3】相模原の年齢3区分別人口推移出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成

 

相模原市全体では楽観的な予想でも人口減と高齢化が予想されていますが、「相模大野」駅周辺はどうなのでしょうか。2015年人口と2040年の人口推計を比較し、増加率が高いほど暖色系に、減少率が高いいほど寒色系に色付けされるメッシュ分析(図表4)によると、「相模大野」駅の北方面を中心に緩やかな人口増を示す黄色が分布していることがわかります。相模原市の6割は森林・山地で占められ、利便性の低い地域は大幅な人口減と高齢化が見込まれています。その受け皿となるのが、市内では商業の集積が見られ、交通の要所でもある「相模大野」駅周辺。多くのエリアで人口減が見込まれるなか、生活利便性、交通利便性、ともに優位性を誇る「相模大野」は、今後ますます“選ばれる街”として存在感を高めていく可能性があります。

 

【図表4】「相模大野」駅周辺の将来人口のメッシュ分析
出所:国土交通省「メッシュ別将来人口推計分析(平成30年推計)」

 

一方で気を付けたいのが、周辺環境の変化。現在、「相模大野」駅周辺の活気の源のひとつである大学。少子化のなかで、運営も厳しくなっていくでしょう。大学の「募集停止」「廃校」といったニュースも耳にする機会が増えています。仮に同じようなことが「相模大野」駅周辺の大学でも起こったら、不動産投資にも大きな影響を与えるでしょう。最新情報を基に投資戦略を考えていく柔軟性が求められます。