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40代経営者にとって、事業の成長とともに個人資産の管理が重要な課題となります。特に、高額所得者は相続税の負担が大きく、対策を講じなければ資産を有効に継承できない可能性も。不動産投資を活用した相続税対策のメリットと、具体的な活用法を解説します。

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相続税とは何のためにあるのかを再認識

成功した経営者が40代でうっすらと感じ始めるのが、自分が亡くなったあとのこと。若い頃から頑張って商売を大きくしてきて、これからもまだまだ頑張るつもりだけど、次第に自分の人生のゴールを意識するようになるものです。

 

大きく育ててきた個人資産を子ども世代に引き継げるのかと、多くの経営者が不安に思っています。相続税で大きく目減りするのは納得がいかない、仮に上手に資産を引き継げたとしても子ども世代が食いつぶしてしまうのではないか、など不安は尽きません。

 

特に資産を大きく減らしてしまう相続税の存在は悩ましい問題です。

 

若い経営者には相続税の意義に疑問を持つ方が大勢います。なぜ個人の努力で築き上げた財産から最大55%もの税率で国が課税するのかと、それだけを抜き取ると憤慨したくもなります。

 

ここで相続税とその意義を再確認してみます。財務省のホームページによると次のように説明されています。

 

「相続税には、資産を再分配する機能があります。また、相続した財産が大きいほど相続税額は大きくなるので、生まれた家庭の経済状況による差を縮小させ、格差の固定化を防止する機能もあります」

 

相続税には富の再分配と、生まれながらの経済格差を縮める役割があるのです。相続税がなければ、欧米の国のように大富豪の家庭に生まれた子どもも大富豪になってしまい、経済格差は世代を超えて固定してしまいます。

 

しかし社会的な意義がある制度とはいえ、努力で積み上げた資産が大きく目減りするのは避けたいところ。そこで多くの経営者が興味を寄せるのが節税です。

 

世の中には数多くの節税テクニックがあり、そのひとつが「不動産投資」です。ある経営者の事例を見ていきます。

年収5,000万円、45歳経営者男性の相続の悩み

 

家族構成

夫Mさん…45歳/会社経営、妻Tさん…44歳/専業主婦、長男…15歳、次男…13歳

年収:5,000万円

金融資産:2億円

自宅:賃貸マンション

 

IT関連の会社を経営しているMさんは45歳。20代半ばで起業し、二度の失敗を経験していますが、30代初めに創業した現在の会社の業績が好調です。現在の年収は約5,000万円。現在の金融資産額は約2億円です。高い年収のため所得税率も高く、手取り額は半分ほどに減ってしまいます。

 

最近の悩みは「相続」のこと。お世話になった先輩経営者が最近亡くなり、莫大な相続税を支払ったと聞いたことがきっかけです。配偶者を早くに亡くしていたため配偶者控除がなく、長男と長女には大きな税負担となったようです。幸い、財産の多くが現預金であったため納税資金には困らなかったようですが、父親が築いた財産は大きく目減りしてしまいました。

 

その状況を聞いたMさんは、自分の場合どうなるのだろうかと不安になりました。15歳の長男と13歳の次男はどちらも小学生のときから不登校のまま。高校進学は考えられない状態です。

 

子どもの一生を支えるためにもお金を残したいと思っていますが、相続税で大きく目減りすることを考えると、一体どうすればいいのかと絶望的な気持ちにもなります。

 

今後もMさんの金融資産は増えていく予定です。そのすべてが現預金。万が一の場合、納税には困りませんが、相続税対策が取られていないため資産の目減りは確実です。

 

Mさんは今後、どのような相続税対策を取っていくべきでしょうか。Mさんがファイナンシャルプランナーに相談してみたところ、対策のひとつとして「不動産投資」を提案されました。

 

「相続税対策の不動産投資って、アパート経営とか? 地方の地主のおじいちゃんみたいだね」とMさんは驚きましたが、FPから詳しく聞いてみることにしました。

「現預金」vs.「不動産」の相続税の違い

不動産投資はなぜ相続税対策になるといわれるのでしょうか。現預金と不動産の相続税の違いについて説明します。

 

まず相続財産が現預金だけの場合、1億円の現預金は1億円と評価され、1億円に対して相続税が課税されます(基礎控除や配偶者控除を除く)。

 

次に不動産を1億円で購入していた場合、その不動産は1億円として評価されません。一般的に時価よりも大きく割り引いた価格で評価されるため、財産の評価を圧縮することが可能になるのです。

 

なぜ相続時に不動産の価値が低く評価されるかというと、不動産は時価を把握するのが難しいという事情があります。売ってみないとわからないのでは不便であるため、一定の基準が設けられているのです。また、不動産は実際に人が住んでいる場所です。相続によって土地を手放すことにならないように評価額の計算では優遇されているという側面もあります。

 

具体的に評価額についての計算式を見ていきます。評価額の計算は建物と土地に分けられます。

 

建物評価額=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

貸家建付地評価額=自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

 

これに加えて、貸付事業用宅地は、小規模宅地等の特例によって土地の評価額を200㎡までさらに50%減額できます。これによって不動産投資によって所有する物件を相続した場合には、相続財産の大幅な圧縮が可能になるのです。

「相続対策」だけでなく、資産を増やす視点も持つべき

相続対策で気をつけなければならないのは、相続税を少なくすることだけに意識が向くと、子ども世代に負の遺産(負動産)を残しかねない点です。

 

相続税は圧縮できたけれど、肝心の賃貸経営が閑古鳥では、物件の維持費だけで財産を失っていくことになります。それでは相続税対策などせず、現預金から納税した方が得になってしまいます。

 

大切なのは、収益性を確保できている優良物件を子ども世代に残しつつ、相続税の圧縮を図るということです。

 

また、不動産投資によって節税するだけでなく、資産を増やす視点も重要です。特にMさんのように子どもの人生を守りたいという目的がある場合には、不動産だけではなく現預金も必要になります。先述したように現預金はそのままの金額で課税されてしまうため不利ですが、資産額を増やしていけば納税後の手残りも増えていくでしょう。

 

不動産投資によって相続税対策をしつつ、投資の成功によって現預金もより増やしていく視点も持つべきです。

 

税理士事務所と提携するハウスリンクでは、相続のご相談もワンストップで承っております。気軽にお問合せください。

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〈執筆者〉

長岡 理知

長岡FP事務所

代表

2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。 住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。