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老後は、年金+退職金でのんびり生活を…と考えていた60代夫婦。しかし、実際にリタイアしてみると、思わぬ出費やインフレ、医療費の増加で生活が苦しくなるケースも少なくありません。「想定外のピンチ」に直面する原因を分析しつつ、現役時代からできる対策を紹介。不動産投資を活用した安定した老後資金の確保についても解説します。
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「年金+退職金で安心」のはずが…想定外のピンチに陥る理由とは?
老後に受け取ることのできる公的年金は、老齢基礎年金・老齢厚生年金の2種類です。老齢基礎年金は、原則として65歳から、受給の要件である資格期間が10年以上ある場合に支給されます。
老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる人が、上乗せとして、厚生年金の被保険者期間に応じて受け取ることができます。老齢厚生年金も原則として65歳から支給。厚生年金の被保険者期間が20年以上など一定の要件を満たす人が、65歳に到達するなどのときにその方に生計を維持されている一定の扶養家族がいる場合には、加給年金が合わせて支給されます。
令和7年4月分からの年金額は、昭和31年4月2日以降に生まれた人の場合の例では、老齢基礎年金の満額6万9,308円。老齢厚生年金額は、夫婦2人分の標準的な金額で23万2,784円です。
厚生労働省(中央労働委員会)の令和5年賃金事情等総合調査では、調査対象産業の令和4年度の平均退職金支給額を公表しています。それによると、男性定年退職者の退職金支給平均額は、大学卒2,139万6,000円、高校卒1,941万5,000円です。
具体的にみていきましょう。
Aさん(63歳)と妻のBさん(60歳)は、子どもたち(長男28歳、長女26歳)が無事に社会人になりました。住宅ローンは65歳で完済の予定です。退職金は2,500万円受け取りました。貯蓄1,000万円と運用資産2,000万円も準備できました。
65歳からは老齢年金を月額20万円、加給年金を年59万円受給。妻のBさんが65歳になると、加給年金はストップしますが、夫婦で月額28万円の年金を受け取れます。二人はのんびり老後を過ごせると考えていました。
生活費は年金だけでは足りないので、貯蓄などから毎月10万円を引き出します。
10万円×12ヵ月=120万円
90歳までに総額3,600万円引き出すことになります。退職金は全額を運用しています。そのお金があれば、生活費の不足分、夫婦の海外旅行、家のリフォーム、子どもたちへの援助などが十分できると考えていたそうです。
平均額より多くの退職金や年金を受け取る予定のAさん夫婦。しかし、現実には、想定外のピンチに陥るいくつかの要因が潜んでいました。
実は足りない?老後資金のシミュレーションとよくある落とし穴
老後資金を準備するために、現状を把握しシミュレーションを行うことは、資金不足に備えることにつながるので、大変重要な作業です。しかし、「計算したから大丈夫」と安心できるとは限りません。
シミュレーションには、気がつかないいくつかの落とし穴があります。そのことを理解しておかないと、実際に老後を迎えてから、「足りなかった!!」という事態に陥る可能性も考えられます。
落とし穴1つ目:老後の生活費が思った以上にかかってしまう。
Aさん夫婦は、生活費を現役時代と同じと考えていました。しかし、実際には、医療費や介護費用など、予想していなかった支出が発生する可能性があります。
落とし穴2つ目:インフレで物価が上昇する。
物価が上昇すれば、生活費が同じ場合、購入できるものが少なくなります。その結果、想定より多くの老後資金が必要になる可能性があります。
落とし穴3つ目:年金の所得代替率の変化
所得代替率とは、65歳時点の年金額が、現役世代の手取り収入に対して、どのくらいの割合かを示すものです。公的年金制度は、少なくとも5年ごとに年金財政の現況や見通しの作成を行う財政検証を実施しています。良い影響が見込める政策での試算が行われていますが、緩やかに下がるケースも示されています。
投資で増やしたはずの資産が…「取り崩しリスク」とは?
もう一つの落とし穴は、「取り崩しリスク」です。Aさん夫婦は、「老後は、今までに準備した貯蓄や運用資金を取り崩して使いながら過ごそう。」と考えています。取り崩す方法は、大きく分けて2つあります。
①資産を毎月X万円など一定額ずつ取り崩す「定額取り崩し」
②資産に一定割合を掛けた金額ずつ取り崩す「定率取り崩し」
資産を運用しながら取り崩すと、資産の減り方が緩やかであるというメリットがあります。
しかし、実際の定率取り崩しは、運用資産総額の時価が上昇したときは取り崩し額が大きくなり、時価が下落したときは取り崩し額が小さくなります。時価が下落したときも、一定額ずつ取り崩したい場合は、相場環境の影響で運用成果が悪化すると、資産が減るスピードが速くなってしまいます。
「運用しているから安心」と考えていても、「足りなくなる!」ことが起こるかもしれません。
不動産投資を活用した老後資金の確保のメリットとは?
老後資金の確保のための多様な選択肢がありますが、その中でも不動産投資は有効な手段の一つとして注目されています。どのようなメリットがあるのでしょうか。
■メリット1
長期的に安定した家賃収入が期待できる点です。適切な物件を選択し入居者が決まれば、毎月家賃収入を得ることができるので、老齢年金の上乗せ分として生活費を補えます。
■メリット2
不動産投資はインフレに強いという特徴があります。物価が上がると家賃も上がる傾向があるからです。また、不動産自体の資産価値も維持しやすいとされています。
■メリット3
生命保険と同様の効果が期待できます。不動産投資ローンを利用する際には、多くの場合団体信用生命保険に加入します。ローンの支払者に万一のことがあっても、残された家族にローン返済の負担はありません。
その他、節税効果や相続税対策にも有効です。
適切な物件・立地選びが重要なのはいうまでもありません。資金計画と融資額のバランス、売却・保有などを検討したうえでの長期的な計画・出口戦略も重要です。
不動産投資で失敗しないために、早い時期から情報収集に努めましょう。顧客の希望をしっかりと聞いてくれる不動産会社、物件購入後の管理を安心して任せられる管理会社など不動産投資のパートナーは、複数の会社を比較して選ぶことをお勧めします。
<執筆者>
藤原 洋子
FP dream 代表FP
大学卒業後、食品メーカーに就職。結婚を機に退職後、専業主婦期間を経て国内大手生命保険会社に転職。営業担当として約12年間、保険商品の販売等を行う。FP資格を活かし、2016年から独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー相談、執筆、勉強会の運営などを行っている。保険の活用と老後を見据えた資金計画、相続について、わかりやすくお伝えしている。