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人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは「東京都町田市」。

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都心へのアクセス至便!商業の集積が進む駅周辺

東京都の南部に位置する町田市。その中心駅である「町田」駅は、JR横浜線と小田急小田原線の2路線が乗り入れる、多摩地域屈指のターミナル駅です。1日の利用者はJRが9万人、小田急線が25万人ほど。都心へのアクセスも良好で、小田急線利用で「新宿」駅へは約35分、JR利用で「横浜」駅へは約30分。さらに小田急線は「代々木上原」駅で東京メトロ千代田線と相互運転を行い、「表参道」には約40分、「大手町」駅には約60分。通勤・通学の利便性も高いのが特徴です。

 

駅周辺は多摩地域の商都として発展。「小田急百貨店町田店」や「町田マルイ」、「ルミネ町田」」など大型商業施設が建ち並び、ショッピングやグルメを楽しむ人々で賑わっています。1990年代後半、女子高生ブームを牽引する「町田109」があったことから、町田を「西の渋谷」という時期もありました。現在の「町田」駅周辺は若者文化を象徴するような商業施設はありませんが、駅周辺には今も多くの若者向けのファッションビルや飲食店が立ち並び、活気ある街並みを形成しています。

 

さらに駅周辺には大型商業施設だけでなく、隠れた人気スポットも。昭和の雰囲気を色濃く残す「町田仲見世商店街」は「西のアメ横」とも呼ばれ、古着屋、雑貨屋、飲食店、食料品店など多様な店舗が軒を連ね、地元の人々に愛されています。三浦しをんさんの「まほろ駅前」シリーズのロケ地になり、作品のファンにとっても聖地巡礼の場所となっています。

 

また駅周辺には、町田市民ホールや町田市立国際版画美術館などの文化施設も点在。これらの施設では、年間を通して様々なイベントや展覧会が開催されており、文化・芸術の発信地としての役割も担っています。

学生をはじめとした若年層とファミリー層から支持

「町田」駅を中心とする町田市は、都心へのアクセス、豊かな自然、充実した商業施設、歴史や文化、子育て環境など多様な魅力が共存する都市です。

 

市内には、国士舘大学や玉川大学、桜美林大学など多くの大学が立地し、若年層の流入が多いのが特徴。「町田」駅周辺に若者をターゲットにした店が多い理由のひとつです。また、町田市は子育て支援にも力を入れており、近年では子どもの転入超過数が全国一位になるなど、子育て世代にも人気の街として注目されています。

 

駅から少し足を延ばせば、薬師池公園や小山田緑地など、四季折々の自然を満喫できるスポットが広がります。都会の喧騒から離れ、自然のなかでリフレッシュできる環境も、町田の大きな魅力のひとつ。歴史的な建造物や文化施設も点在しており、町田天満宮や武相荘などは、地域の歴史と文化を今に伝えています。また、町田時代祭りなど、地域に根付いた伝統行事も開催されており、地域住民との交流の場となっています。

多摩地域の中心「町田」の今後の姿は?

では、町田市の現況についてみていきましょう。2020年に行われた国勢調査によると、町田市の人口は43万1,079人。5年前調査の43万2,348人から1,269人、0.29%の減少を記録しました。一方、世帯数は19万1,703世帯。5年前調査から4,992世帯、2.67%増加しています。人口減の一方で世帯数増というのは、核家族化の進行と、単身者の流入によるものと考えられます。

 

人口分布を人口ピラミッド(図表1)でみていくと、ボリュームゾーンは40代~50代の働き盛り。また10代後半から20代前半で山ができ、20代後半から30代前半に谷ができているのは、町田市に教育機関が多く点在し、若者層が流入しているから。就職とともに市外へと転入する一方で、30代以降はファミリー層の流入がみられると考えられます。

 

【図表1】町田市の人口ピラミッド
出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」

 

人の流れをみていくと、昼間人口は33万7,325人に対し、夜間人口は37万9,905人で、昼夜人口比率は90.27%。典型的なベッドタウンの特徴を表しています。

 

町田への流入数は7万6,282人。地域別にみていくと「神奈川県相模原市」からの流入が最も多く25.07%。「神奈川県横浜市」が16.72%と続きます。年齢別では「20~24歳」が最も多く17.41%。「15~19歳」が14.37%と続きます。近隣からの通学者が多いのでしょう。

 

一方で流出数は11万7,001人。地域別にみていくと、「神奈川県横浜市」への流出が最も多く16.31%。「神奈川県相模原市」が12.16%と続きます。また年齢別では「45~49歳」が最も多く13.06%。「50~54歳」が12.21%と続きます。地域別5位以降は「東京都新宿区」「東京都千代田区」「東京都港区」「東京都世田谷区」「東京都渋谷区」と続くことから、小田急線と、小田急線に乗り入れる東京メトロ千代田線を利用する通勤客と考えられます。

 

次に家賃相場についてみていきましょう。「町田」駅周辺の家賃相場を大手住宅検索サイト3社の平均でみていくと、ワンルームが5.7万円、1Kが7.1万円、1DKが8.7万円、1LDKが10.5万円、2LDKが13.4万円、3LDKが21.5万円。隣接する「相模大野」駅などの周辺エリアよりは高いものの、都心と比べるとかなりリーズナブル。また物件数もワンルーム/1Kで合計4,000件を超える物件がヒットするなど、物件数が豊富なのも町田の特徴。一方、貸主目線ではそれだけライバルとなる物件が多いということもいえそうです。

 

そんな町田市/「町田」駅周辺の将来像をみていきましょう。国立社会保障・人口問題研究所の推計のなかで、最も楽観的なシミュレーションでは、人口は43~44万人前後で推移するという予測がある一方で、最も人口減を記録するシミュレーションでは2040年に40万人を割り込む水準に、2060年には35万人を下回るとされています。

 

【図表2】町田市の人口推計
出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成
※パターン1:全国の移動率が今後一定程度縮小すると仮定した推計(社人研推計に準拠)
シミュレーション1:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準は2.1)まで上昇したとした場合のシミュレーション
シミュレーション2:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇し、かつ人口移動が均衡したとした(移動がゼロとなった)場合のシミュレーション。

 

また2015年時点での人口を100とした際の年齢別の人口推計をみていくと、65歳未満の年少人口、生産年齢人口ともに、2040年には7割台、2060年には5~6割台まで減少します。一方、増加するのが高齢者。2040年代後半から2050年にかけて、2015年比140%弱まで増えていき、2050年以降は緩やかに減少していきます。

 

 

【図表3】町田市年齢3区分別人口推移
出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成

 

楽観的な予測では総人口はキープしつつも、高齢化が加速する町田市。「町田」駅周辺の今後の人口増減をみていきましょう。2015年人口と2040年の人口推計を比較し、増加率が高いほど暖色系に、減少率が高いいほど寒色系に色付けされるメッシュ分析によると、「町田」駅の南側、横浜線「町田」駅周辺は緩やかな人口増がみこまれていますが、駅北側、繁華街方面は人口減が予測されています。駅南側は現在も造成、整備が進んでいる地域。人口流入が見込まれるもの、成熟した市街地が形成されている駅北側のエリアは、それほど目立った人口増はみられないようです。

 

 

多摩地域の中心であり、「西の渋谷」の異名をもつ「町田」駅周辺。町田市全体ではそれほど目立った人口減は予想されていないものの、最も厳しいものでは大幅な人口減も見込まれています。現在、市内には多くの教育機関が点在し、繁華街は多くの若者を引き付けています。アクセスの優位性からもファミリー層の支持も厚いのも町田の特徴です。

 

これらの人口層からの支持を今後も集めることができるのか。若年層であれば、大学等の都心回帰の動きは気になるところ。町田市においても例外ではありません。また現在、町田周辺は費用面で「ファミリー層が住まいを構えるちょうどいい立地」です。今後人口減が進むなか、都心の不動産価格が下落すれば、都心近くが「費用面でちょうどいい立地」となり、町田の優位性は薄れる可能性があります。不動産投資を進めていくにあたり、このような社会的変化に注視していく必要があるでしょう。