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人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは神奈川県川崎市大和市、小田急江ノ島線「桜ヶ丘」。

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大和市内の鉄道駅のなかでもマイナーな「桜ヶ丘」

以前、神奈川県大和市について、このエリアでの不動産投資の可能性について考察しました(関連記事:『子育て環境抜群の「大和市」…不動産投資の可能性は?』)。今一度、大和市の概要について振り返ってみましょう。

大和市があるのは神奈川県の中央部、東京都心から40~50kmの距離。東京のベッドタウンとして発展し、1970年に10万人だった人口は、1995年に20万人を突破しました。

市の中央部を東西に相模鉄道相鉄本線、南北に小田急電鉄江ノ島線、北部には東急電鉄田園都市線が乗り入れています。相鉄線「大和」駅から「横浜」駅には25分程度、小田急江ノ島線「中央林間」駅から「新宿」駅には40~50分程度、東急田園都市線「中央林間」駅から「渋谷」駅には40分程度でアクセス。東急線も小田急線も東京メトロとの相互運転を行っているので、東京方面にも横浜方面にもダイレクトにアクセスできる、交通至便なエリアです。また市内に3本の国道が走るほか、東名高速道路のインターチェンジも近く、市内には物流の拠点施設も点在しています。

また大和市は子育て支援が充実していることでも知られ、待機児童ゼロが続いています。公共施設も充実し、特に「大和市立図書館」は全国でも屈指の利用者を誇る公立図書。公園や自然も多く、バランスのよい住環境で子育て層からの支持の厚いエリアです。

そんな大和市において「桜ヶ丘」は、マイナーな駅のひとつ。市内を南北に走る小田急江ノ島線の6駅のなかでも乗降客数は2021年、1万6,965人。コロナ禍前の2010年代は、2万人台で安定的に推移していました。

人口減の一方で世帯数増の「桜ヶ丘」周辺

神奈川県大和市と綾瀬市にまたがる日米共同使用の厚木基地

大和市の桜ヶ丘地域が市街地化されたのは、昭和 40 年代後半から 50 年代にかけて。現在では小規模ながら緑豊かで閑静な街並みが形成されています。1990年代には大規模な県営住宅が整備されています。

地域の拠点となるのは「桜ヶ丘」駅周辺。桜ヶ丘中央病院や桜ヶ丘連絡所などが立地し、駅ビルの「小田急マルシェ桜ヶ丘」にはクリニックや調剤薬局が入店。駅周辺には目立った商業の集積はありませんが、食品スーパーのほかドラッグストアやコンビニが立地し、日常生活に困ることはありません。また隣駅は市の中心駅である「大和」で、徒歩で30分、車で10分、電車で2分でアクセス可能。少し落ち着いた環境を望むなら、「桜ヶ丘」は選択肢のひとつになるでしょう。

そんな「桜ヶ丘」駅周辺の人口は、2025年1月1日推計で2万2,966人、世帯数は1万0,920世帯(福田、柳橋、上和田の合計)。5年前と比較すると、人口は314人(男性-286人、女性-28)の減少となりましたが、世帯数は492世帯増。人口予測において、大和市の人口は今がピークで今後は減少するという予測があります。現に、地域によってはすでに人口減となっているエリアもあり、桜ヶ丘地域もそのひとつです。しかし人口は減少する一方で世帯数は増加していることから、核家族化が進む一方、単身者層の流入は続いていることがわかります。

 

【図表1】大和市の人口推計出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成※パターン1:全国の移動率が今後一定程度縮小すると仮定した推計(社人研推計準拠)シミュレーション1:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇したとした場合のシミュレーションシミュレーション2:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇し、かつ人口移動が均衡したとした(移動がゼロとなった)場合のシミュレーション

 

さらに「「桜ヶ丘」周辺の将来人口をメッシュ分析でみていきます。メッシュ分析では2015年の人口と2040年の将来推計人口を比較した際、増加率が0を上回ると暖色系の色に、0を下回ると緑→青と寒色系の色が濃くなって表示されます。それによると「桜ヶ丘」周辺は緩やかな人口減を示す緑色が多いことがわかります。一方で、駅から離れた西部と西南部に、一部人口増を占める「黄色」と「赤色」をみることができます。

 

【図表2】「桜ヶ丘」駅周辺将来人口メッシュ 出所:国土交通省『メッシュ別将来人口推計(平成30年推計)』

 

なぜ「桜ヶ丘」駅から少し離れたところで、局所的に人口増が見込まれているのでしょうか。そのヒントは駅から徒歩23分ほどの距離にある「自衛隊厚木基地」。大和市からお隣の綾瀬市にかけて広がっています。実は「桜ヶ丘」は「自衛隊厚木基地」の最寄り駅のひとつで、大和市はいわゆる“基地の街”という側面をもっているのです。基地周辺では基地と取引する企業が点在。現在、単身者層が増えているのは「基地ニーズ」がひとつの要因と推測できます。つまり今後も基地があり続ける限り、安定した賃貸ニーズが見込める可能性が高いといえるのです。

都心から40~50キロ離れたエリアでは、東京のベッドタウンとして発展してきた歴史がある一方で、今後、人口減が見込まれている地域も多くあります。一方で「桜ヶ丘」周辺のように、大学や大企業の工場などが立地し、今後も安定的な賃貸経営が見込まれるエリアがスポット的に存在します。そのようなエリアに注目し、いかにして賃貸ニーズに応えていくことが、今後の不動産投資における必勝法といえるでしょう。