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高所得ではあるものの、そのぶん、教育費も住居費も相当高め。意外とやりくりが大変ということは珍しくありません。さらに、夫婦のこれからも見据えて資産形成も進めたいものですが……FPのアドバイスは?

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世帯年収が3,000万円、高所得だが貯蓄が少ない

人が羨むほどの高所得のエリート会社員の多くは、生活のランニングコストが高いもの。子どもの教育にかける費用も、住宅費も、日常の生活費もすべてが高水準になっています。しかし、その所得に対して貯蓄額が少ない人は珍しくありません。世帯年収が3,000万円ありながら、投資を含めた金融資産の合計が100万円以下というケースです。当然、大きな買い物はすべてローンを借りることになります。

もちろん所得が高いので毎月の返済はできますが、常に固定の支出が大きくなり貯蓄が難しくなります。それでも今は生活できるものの、もし急に収入が下がってしまったらどうなるでしょうか。簡単に家計が行き詰まる様子が想像できます。

できることなら、今の裕福な生活スタイルを一生維持し、さらには子ども世代にも十分な資産を残したいものです。高所得の会社員世帯が対策すべきリスクと、持続可能な資産形成についてFPがアドバイスします。

 

【事例】

夫Iさん:41歳、年収3,100万円

妻Kさん:39歳、専業主婦

長女:12歳

次女:10歳

預貯金:600万円

 

Iさんは東京都内でコンサルティングファームに勤務する41歳です。年収はインセンティブ給を含め3,100万円ほど。妻のKさんは39歳で専業主婦をしています。6年前に湾岸エリアのタワーマンションを購入。当時、1億5,000万円という価格は高すぎると驚きましたが、現在同程度の物件は2億円に迫る状態。結果的に買い物に満足しています。

しかし、Iさんが不安に思っていることがあります。それは貯蓄の少なさ。現在の預貯金は約600万円。年収額に対して少ないことを気にしています。職場の同僚はNISAや株式投資の話題をよくしていますが、Iさんは一度もやったことがありません。マンションを購入したこともあり、投資に回す資金の余裕がないと感じているのです。

子どもは娘が2人。どちらも私立小学校に通い、学校納入費は2人で年間200万円ほど。来年は長女が中学に進学するため、今よりもさらに支出が増える予定です。

また、住宅ローンの返済は月38万9,000円。さらに管理費と修繕積立金の支払いがあり、毎月の手取り89万円の大きな割合を占めています。他にも高級SUVの自動車ローンの返済が毎月8万円あり、仕事上の交際費もあります。生活費に使えるお金はさほど多くありません。赤字となる部分は年4回支給されるボーナスで補填しています。2024年にできた貯蓄は50万円という状態でした。

夫Iさんは、このままでは子ども2人の学費と住宅ローンを返済するだけで現役時代の収入が消えるような気がしています。リタイア後は北海道に移住したいという夢がありますが、実現できるか不安です。

リタイア時にいくらの金融資産を持っているべきなのか、そしてどのような資産運用をすべきなのか、FPに相談してみることにしました。

老後が始まるまでにいくら貯蓄があればいいのか?

FPがIさんの家計を分析してみたところ、貯蓄ができない理由はランニングコストの高い生活スタイルが原因であって、これ自体は特に問題があるわけではないとのこと。

「浪費ではなく、子どもの教育費と住宅費の支出が高いことが原因であるため、極端な節約をしなければならない状態ではありません。ただ、現状のままでは老後生活はかなりの節約を強いられることになります」とFPはいいます。

「65歳のときにどのくらいの貯蓄をもっておくべきなのでしょうか」とIさんが質問します。

FPが計算したところ、現状のままでは65歳時に5,000万円の金融資産が残るとわかりますが、住宅ローンが残っているためわずか5年で使い果たします。理想としては65歳時に1億円、そこから公的年金以外に累計5,000万円の継続した収入があれば、それなりに裕福な老後生活が送れるはずです。さらにマンションを売却し、北海道に移住して新しい住まいを見つけることも可能になるでしょう。

「それは可能なのでしょうか……」とIさんが質問します。

FPが提案した資産運用とは

Iさんがすべき資産運用には次のようなポイントがあるとFPが説明します。

・まずは現金で預金を確保すること(毎月の生活費×12ヵ月分)

・NISAでの積立投資を始める

・さらに「副業」としての投資を検討する

現金での預金と積み立て投資は、どうしても支出を見直して原資を確保しなければなりません。浪費が多ければ家計の見直しは簡単ですが、Iさんの家計では節約の余地には限界があります。

そのため、副業としての投資も加えて資産形成を加速させる必要があります。

副業にはさまざまなものがありますが、多忙なIさんに向いているのは「不動産投資」であるとFPが提案します。

「不動産投資はリスクが高いというイメージです」とIさんが不安そうにいいます。

確かにアパート経営で失敗した人もいます。多くは高齢の地主が相続対策として建てた物件でしょう。不動産会社の売り込みを鵜呑みにし、自身でのマーケティングなど経営戦略の甘いケースが多々あるのです。

あくまでも副収入としてのアパート経営であるため、借り入れを増やし経営規模を拡大していく必要はありません。立地戦略、入居者のペルソナ設定、事故死などのリスク対策を綿密に検討して、最低限の部屋数でインカムゲインを得ていくことが重要です。

Iさんの場合、実質利回りを7%程度確保できれば、家計のキャッシュフローが劇的に改善します。不動産でのインカムゲインを金融投資に再投資することで、資産形成のスピードがさらに速くなります。減価償却費という現金の支出を伴わない必要経費も、家計のキャッシュフローに有利に働くことがわかります。経営がうまくいけば、最終的にオーナーチェンジとして売却し、キャピタルゲインを得て手じまいすることも可能です。

不動産投資は金融投資と異なり「現物投資」であるため、経済環境の変化に直接的な影響を受けにくい投資です。海外での戦争などの動乱で株価は変動するリスクがありますが、不動産投資への影響は最低限。当然、不動産投資に特有のリスクは常にありますが、オーナーの経営センスと努力次第という要素が大きく、成功するチャンスが大きいことが魅力です。特に大手企業勤務で高所得の会社員は金融機関からの借入れに有利であるため、「会社員しか始められない投資」ともいわれることがあります。

会社員が不動産投資を取り入れるときには、必ず収支のシミュレーションを家計に当てはめてみて、各種専門家のアドバイスを得て検討を重ねることをおすすめします。特に物件を提案してくれる不動産会社次第という側面は否めません。

 

<執筆者>

長岡 理知

長岡FP事務所

代表

2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。 住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。