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人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは神奈川県川崎市麻生区、小田急線「柿生」。
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良質な住宅地として人気の「新百合ヶ丘」の隣駅「柿生」
2024年4月9日現在、155万0,24人と、福岡市に次ぐ全国6位の人口を誇る川崎市。7つの行政区があり、北西部の多摩丘陵に位置するのが「麻生区」です。川崎市は高度成長期以降、市北西部が東京のベッドタウンとして人気を博すようになり、人口が急増。1982年に多摩区から分区する形で麻生区は誕生しました。
麻生区の中心的存在といえるのが、小田急線「新百合ヶ丘」。その誕生は新しく1974年。多摩ニュータウン開発と小田急多摩線の建設に伴い、小田急本線から分岐する駅として新設されました。以降、川崎市の北部副都心として発展。駅周辺には「イオンスタイル新百合ヶ丘」や「新百合丘OPA」、「新百合ヶ丘エルミロード」などの大型商業施設が林立し、多くの買い物客でにぎわっています。また駅周辺は風俗営業を禁止しているため、遊技場が非常に少ないのも特徴。良好な住宅地として、特にファミリー層から支持を集めています。その広がりは、隣駅の「百合ヶ丘」や、今回焦点を当てる「柿生」にも。
「新百合ヶ丘」から町田方面にひと駅いった「柿生」は、麻生区内では最も歴史のある駅。2022年度の1日平均乗降者数は3万1,978人。「新百合ヶ丘」には徒歩30分弱なので、場所によっては「柿生」ではなく速達列車の止まる「新百合ヶ丘」を利用する人も多いエリアです。
駅周辺には「マルエツ 柿生店」「そうてつローゼン 柿生店」と2軒のスーパーマーケットのほか、40店ほどの柿生中央商店会。その東側には大規模な住宅地が広がりますが、ほかは田畑も残るのどかな郊外といった雰囲気。一方で、新たな開発の余地のない新百合ヶ丘の受け皿として、宅地化が進んでいます。
注目エリア「新百合ヶ丘・柿生」エリアの2040年の姿
では川崎市麻生区「柿生エリア」についてみていきましょう。
2020年に行われた国勢調査によると、神奈川県川崎市麻生区の人口は18万0,705人。5年前の調査から5,182人の増加を示しており、増加率は約3.0%です。一方で世帯数は7万9,395世帯。こちらは5,244世帯の増加。人口よりも世帯数が増加するという、特徴的な動きをみせています。
麻生区の平均年齢は45.69歳。これは川崎市全体の43.67歳を上回りますが、全国平均46.01歳を下回ります。さらに年齢区分別にその割合をみていくと、15歳未満は2万3,039人で麻生区全体の12.32%、労働生産人口である15~64歳は11万1,041人で61.45%、65歳以上が4万2,673人で23.61%。川崎市全体でみると、15歳未満年齢の割合は若干多く、また65歳以上の高齢者人口は4ポイント近く多くなっています。1980〜90年代、良質な住宅地を求めて流入してきたファミリー層が、現在は65歳以上の高齢者。住みやすさから、いまなお定住していることが要因のひとつ。実は令和5年5月12日に厚生労働省が公表した『令和2年市区町村別生命表』によると、麻生区は男女ともに平均寿命が全国一。単に高齢者の割合が多いのではなく、「元気な高齢者が多い」のが麻生区の特徴といえるでしょう。
人口分布を人口ピラミッドでみていきましょう(図表1)。ボリュームゾーンは40代後半から50代前半。続いて70代前半、また若年人口をみていくと20代前半が一段多いことがわかります。麻生区には「田園調布学園大学」や「昭和音楽大学」、「東京都市大学 王禅寺キャンパス」「日本映画大学」など、大学が多く、ファミリー層のほか、学生も多く居住。そんな麻生区の特徴を人口ピラミッドからも読み取ることができます。
さらに「柿生」駅周辺についてもみていきましょう。駅周辺は「上麻生5丁目〜7丁目」。駅前の商店街を抜けると、田畑が混在する住宅地。さらに東側奥へと進んだ「王禅寺西6〜7丁目」は、新百合ヶ丘エリアから続く大規模な住宅地で、駅西側の「片平2〜3丁目」と同様、80年代前後に開発が進みました。人口は1万6,268人。前年同月比100.1倍と、ほぼ同水準を保っています。また人口密度をみていくと、最も高いのが駅周辺の「上麻生5丁目」で1平方キロ当たり1万3,418人と、続く「片平3丁目」の9,879人や「王禅寺西6丁目」の9,795人を大きく圧倒。駅周辺だけあり、集合住宅の多いことが伺えます。
続いて、麻生区の建物状況についてみていきましょう。2023年時点、麻生区の建物数は39,087件。そのうち戸建住宅は32,350件で全体の82.7%、アパートやマンションなどの共同住宅は3,119件で9.6%を占めます。川崎市全体でみていくと、戸建て住宅は69.7%、共同住宅は16.2%。麻生区は戸建て住宅の割合が高く、多くのファミリー層に支持されるエリアだということがわかります。一方で賃貸住宅は少なく、希少性が高いエリアと捉えることもできるでしょう。
次に家賃相場についてみていきましょう。「柿生」駅周辺の家賃相場を大手住宅検索サイト3社の平均でみていくと、単身者がターゲットとなるワンルームで5.88万円、1Kで6.15万円、1LDKで8.61万円。ファミリー層もターゲットとなる2LDKで9.49万円、3LDKで16.75万円です。
お隣の「新百合ヶ丘」周辺と比べてみると、ワンルームでは8,000円、1Kでは6,800円、1LDKで2万2,000円、2LDKでは5万2,000円ほど平均家賃が安くなっています。生活利便性、交通利便性ともに高い「新百合ヶ丘」周辺は家賃水準も高め。利便性か、それとも割安の家賃か……その分岐点になる賃貸物件の家賃水準をしっかり見極めることが、「柿生」周辺での賃貸経営では求められそうです。
そんな神奈川県川崎市麻生区の将来像をみていきます。
国立社会保障・人口問題研究所の推計のなかで、最も厳しいパターンでは2030年以降に人口は減少に転じ、2050年以降に人口17万人を割り込みます。一方で最も楽観的な予測では麻生区の人口は増え続け、2050年には人口20万人を突破するとされています(図表2)。
2015年時点での人口を100とした際の年齢別の人口推計をみていくと、今後、唯一、人口増が見込めるのは65歳以上の高齢者のみ(図表3)。賃貸経営においてメインターゲットとなる現役世代は下降線。2040年には2015年水準の8割にまで低下します。賃貸経営においては、いかに現役世代のニーズを捉えるかとともに、増え続ける高齢者需要にどう応えていくかも、重要な戦略といえそうです。
さらに「柿生」周辺の将来人口をメッシュ分析でみていきます。
メッシュ分析では2015年の人口と2040年の将来推計人口を比較した際、増加率が0を上回ると暖色系の色に、0を下回ると寒色系の色が濃くなって表示されます。それによると「柿生」周辺は80年代前後に造成の進んだ、駅から少々離れた王禅寺エリアは寒色系の色が広がる一方で、ほかのエリアは人口の微増のエリアが広がります。田畑が残る駅周辺は、今後、宅地化が期待されるといえるでしょう。
地下鉄延伸で「新百合ヶ丘」周辺で地価上昇
「柿生」周辺は、一部、人口減が見込まれますが、今後も緩やかな人口増が見込まれるエリアです。特に「新百合ヶ丘」では、2030年に横浜市営地下鉄ブルーラインが延伸開業の予定があり、交通アクセスが一段と向上する可能性があります。昨今の建築費の高騰などにより、開業に向けての動きが不透明な部分もありますが、期待感から地価も上昇しています。
地下鉄延伸の期待感は、「新百合ヶ丘」から徒歩圏内の「柿生」周辺にも波及していますが、すでに家賃水準の高い「新百合ヶ丘」を避け、その周辺部で賃貸物件を探す動きもみられます。そのような賃貸ニーズをいかにつかむことができるか、「柿生」周辺での不動産投資の勝利の鍵となりそうです。