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人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは埼玉県「所沢市」。

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多方面にアクセスできる交通利便性が魅力

埼玉県の南西部に位置する所沢市。北は同県の川越市や狭山市など、南は東京都の東村山市や武蔵村山市などと接し、人口はさいたま市、川口市、川越市に次ぐ4位です。

東京のベッドタウンとして発展し、市内を西武池袋線・新宿線と、西武鉄道の本線2線が走り、交差する「所沢」は西武グループの本拠地として発展してきました。

同駅から「池袋」には最短30分弱、東京メトロ有楽町線と乗り入れ、「飯田橋」に50分、「有楽町」に60分ほどでアクセスできます。さらに東京メトロ副都心線とも直通運転し、「新宿三丁目」「渋谷」、さらには東急電鉄東横線で横浜方面にもリーチできます。新宿線では「高田馬場」や「西武新宿」へ40分前後でアクセス可能。多方面にダイレクトにリーチできるうえ、都心から30〜40km離れているため家賃水準もリーズナブル。単身世帯を中心に支持を得ています。

そんな所沢ですが、2000年以降に大型店が相次いで閉店したことで地盤沈下がいわれていましたが、昨今は再開発により息を吹き返した感があります。2019年に『西武所沢店』が「脱百貨店」を目指して『西武所沢S.C.』に生まれ変わり、2024年4月には駅東口側に「SOCOLA所沢」、2024年9月には西口側に「エミテラス所沢」と、巨大商業施設が相次いでオープン。さらに「東所沢」近くに『ところざわサクラタウン』が開業するなど、大きな話題になりました。

「所沢」周辺に商業の集積が見られる一方で、日本の航空発祥の地である「所沢航空記念公園」や、『となりのトトロ』の舞台のモデルのひとつである狭山丘陵など、自然環境に恵まれているのも所沢の特徴のひとつ。近年、子育てしやすい街としても注目を集めています。

所沢市の投資エリア…候補となる3駅

不動産投資を検討するうえで重要なポイントとなる所沢市内の「鉄道網」と「駅」について見ていきましょう。

所沢市には都心に直結する西武池袋線と西武新宿線の2路線が市の南東から北西にかけて並走するほか、「所沢」駅から「西武球場前」駅をつなぐ西武狭山線、「西武球場前」駅と「西武園ゆうえんち」駅をつなぐ西武山口線が走ります。またJR武蔵野線が市の南東部をかすめるように走っています。

所沢市内の駅を核にしていくと、池袋線が「所沢」「西所沢」「小手指」「狭山ヶ丘」、新宿線が「所沢」のほか、「航空公園」「新所沢」、狭山線が「西所沢」のほか、「下山口」「西武球場前」、山口線が「西武球場前」のほか「西武園ゆうえんち」と、西武鉄道が9駅。JR武蔵野線が「東所沢」の1駅が所沢に位置します。

乗降客数をみていくと、トップは「所沢」で 10万1,1230人/日と圧倒。2位は「新所沢」で4万7,572人、3位は「小手指」で42,067人。以下「西所沢」「狭山ヶ丘」「航空公園」が2万人台/人と続きます。

乗降客から考えると、「所沢」のほか「新所沢」「小手指」あたりが有力な投資エリアといえるでしょう。

これらの駅の賃貸相場を大手住宅検索サイト3社の平均でみていきましょう(図表1)。乗降客数の多い「所沢」では家賃の高い傾向にありますが、ワンルームでは「小手指」が最も家賃相場が高くなりました。これは「所沢」に比べて、「新所沢」「小手指」は単身者向け賃貸物件が少ないことがひとつの要因。またこの2駅はファミリー向け賃貸物件も少なく、分譲集合住宅が多いのも特徴。不動産投資を検討する際には、賃貸ニーズを的確に捉える必要がありそうです(図表1)。

【図表1】「所沢」「新所沢」「小手指」の家賃相場
出所:大手住宅検索サイト3社の平均値を算出

所沢の2040年と不動産投資戦略

2020年に行われた国勢調査によると、埼玉県所沢市の人口は34万2,464人。5年前調査から2,078人、0.61%の増加を記録。一方で世帯数は15万2,652世帯で、5年前調査から6,818世帯、4.67%の増加を記録しました。

もう少し、世帯構成を細かくみていきましょう。一般世帯*15万2,652世帯のうち、単身世帯は5万4,720世帯で全体の35.88%。2人世帯は4万5,531世帯で全体の29.85%。3人以上世帯は5万2,259世帯で全体の34.27%。埼玉県(単身世帯33.95%、2人世帯29.07%、3人以上世帯36.97%)と比較すると、特に単身世帯の多いエリアといえるでしょう。

*総世帯から「施設等の世帯」を引いた世帯

所沢市の平均年齢は48.32歳。人口分布を見ていくと、15歳未満の割合は 11.23%、15~64歳が59.20%、65歳以上が29.57%。(図表1)。埼玉県全体(15歳未満11.69%、15~64歳59.02%、65歳以上27.14%)と比較すると、県内では高齢化が進んでいる地域です*。

*総人口から年齢不詳人口を引いた割合

人口分布を人口ピラミッドで細かく見ていきましょう(図表2)。20代後半から徐々に人口ボリュームは増えていき「45~49歳」でピークに達します。以降、60代前半までボリュームは減少。その後増加に転じ「70~74歳」で再度ピークに達します。

【図表2】埼玉県所沢市の人口ピラミッド
出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」

そんな埼玉県所沢市の将来像をみていきます。

国立社会保障・人口問題研究所の推計のなかで、最も厳しいパターンかつ、現実路線のパターンでは、2040年前半に総人口は30万人を下回り、2050年には28万人、2060年には25万人と減少していきます。また今後出生率が改善する楽観的なシミュレーションでも2040年には32万人、2065年には30万人と人口減は避けられないと推測されます(図表2)。

【図表3】埼玉県所沢市の人口推計
出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成

※パターン1:全国の移動率が今後一定程度縮小すると仮定した推計(社人研推計準拠)
シミュレーション1:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇したとした場合のシミュレーション
シミュレーション2:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇し、かつ人口移動が均衡したとした(移動がゼロとなった)場合のシミュレーション。

2015年時点での人口を100とした際の年齢別の人口推計をみていくと、2040年には15~64歳の生産年齢人口は7割近くまで減少。一方で高齢者人口は2040年代に138まで上昇します。所沢市における賃貸経営では、高齢者をいかにリーチするかもひとつの戦略といえそうです(図表4)。

【図表4】年齢3区埼玉県所沢市分別人口推移
出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成

所沢市の将来人口をメッシュ分析でみていきます。

メッシュ分析では2015年の人口と2040年の将来推計人口を比較した際、増加率が0を上回ると暖色系の色に、0を下回ると寒色系の色が濃くなって表示されます。それによると「所沢」駅周辺の人口は微増傾向にありますが、「新所沢」「小手指」駅周辺の人口は微減を予測しています(図表5)。

【図表5】所沢市将来人口メッシュ分析
出所:国土交通省『メッシュ別将来人口推計(平成30年推計)』

都心から30〜40kmに位置する「所沢」は、将来的に人口減、高齢者率増が見込まれる地域です。一方で「所沢」は西武鉄道の本拠地として、今後も埼玉県西部の中核というポジションは揺るがないと考えられ、一定の賃貸ニーズは見込まれるでしょう。しかしほかの駅周辺は厳しい状況が予測されます。このようなエリアにおいては、より賃貸ニーズを的確に捉えていく目利き力が必須となります。